tag:blogger.com,1999:blog-31612780185792346692024-03-14T11:22:49.634+09:00Tomoya's Blog from Nairobi Branch Office2009年4月よりナイロビ出張所(仮称)に駐在しております。Tomboyahttp://www.blogger.com/profile/08243481617421050656noreply@blogger.comBlogger47125tag:blogger.com,1999:blog-3161278018579234669.post-39873764920560983642012-04-27T21:25:00.001+09:002012-04-27T21:47:16.093+09:00Nairobi Branch 閉店のお知らせご報告遅れましたが、3月末でNairobi Branchを閉め日本に帰国致しました。ケニアで過ごした3年の間に貴重な体験を色々とさせて頂きました。特に、多くの調査を実施したこと、また調査通じて、色んな地域をを訪れ沢山の人々の話を伺うことができたことで、研究者としての知見を大幅に広げることができました。今後暫くは研究の成果を世に知らしめるべく執筆活動に注力したいと考えております。その進捗をこの場でも報告していきたいと思います。Tomboyahttp://www.blogger.com/profile/08243481617421050656noreply@blogger.com1tag:blogger.com,1999:blog-3161278018579234669.post-39292625607507172522012-01-17T23:31:00.007+09:002012-01-23T04:31:39.587+09:00またまたガソリン不足昨日、車の燃料タンクが空になりかけていたので、 職場に行く途中 ワイヤキ道沿いのガソリンスタンドに寄ったらガソリンがない。で2件目もない。そして3件目もない。何かあったのか?4件目いつもなら入らないようなシャビーなスタンドに入ると、やっとありました。暫くガソリンを入れられない可能性もあるので、取り敢えず満タンにして一安心。<div><br /></div><div>今回のガソリン不足の背景は今日の<a href="http://www.businessdailyafrica.com/Oil+shortage+hits+motorists+as+fresh+supplies+delayed+/-/539546/1308550/-/bde6ddz/-/index.html">Daily Nationの記事</a>にありました。原因は小売業者が燃料の市場価格の下落を予想し、元売からの購入を買い控えていたことがあるようです。つまり、高い卸売価格で元売から今日買い、数日後に市場価格が大幅に下がってしまうと、利ざやがマイナスになってしまうという状況を予想し、小売業者が買い控えをし、品不足になったというわけです。</div><div><br /></div><div>でも、品不足になるくらいですから、卸売価格が急に下がったとしても、在庫を抱えている小売業者が急に小売価格を下げる必要は無く、そうすると市場価格も急には下がらず、徐々に下がって行きそうなものです。だとすると、小売業者は、燃料の卸売価格の下落を気にして、買い控える必要もなく、急な品不足は起らなそうなものです。</div><div><br /></div><div>なのにガソリン不足が起こってしまう訳は、ケニア特有の事情があります。新聞記事には解説はありませんが、燃料価格の規制にあります。ケニアの燃料価格は、エネルギー規制委員会(<span style="color: rgb(51, 51, 51); font-family: 'Trebuchet MS', Helvetica, sans-serif; font-size: 14px; line-height: 18px; background-color: rgb(255, 255, 255); ">Energy Regulatory Commission</span>)が上限価格を規定していて、それに違反した小売業者は罰金(100万シリング)を納めなければなりません。上限価格は、ある公式にその時の卸売価格と輸送費などを代入すると決まるようになっているので、卸売価格の変動が、上限価格に直接影響します。このために、卸売価格が下落すると、小売価格の上限も自動的に下落する仕組みになっているのです。だから卸売価格の大幅な下落が予想されると、買い控えなんかが起こるんです。</div><div><br /></div><div>価格統制が無ければ、そんなことも起こらないんですけどねえ。<a href="http://tom-matsumo.blogspot.com/2010/07/blog-post.html">以前の記事</a>にも価格統制の弊害を書きましたが、価格統制が消費者の利益に繋がるケースは非常に稀です。ですが、「国民の必需品の価格がある水準以上には上がらないように規制しよう」というのは、一見良い政策に聞こえ、国民受けが良く、だから政治的にも人気の政策なんですよね。</div><div><br /></div><div>こういう一見良さげな、でも実は国民の利益を損ねる政策に、国民の多くがダメだしできるように経済学を勉強しよう。</div><div><br /></div><div>それにしてもこの国では、色んな理由で色んな物が品不足になるなあ。</div>Tomboyahttp://www.blogger.com/profile/08243481617421050656noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3161278018579234669.post-9573842323862844442012-01-03T12:34:00.003+09:002012-01-03T13:00:51.403+09:00明けましておめでとうございます。ケニアでの研究生活もあと二ヶ月半となってしまいました。思い残すことないよう全力で取り組んでいきたいと思います。この様な長期に渡る研究の機会を与えてくださった大学・恩師・同僚の皆さまには、言葉に変えられない程の感謝の気持ちでいっぱいです。また、研究生活を支えてくれている家族、特に妻には本当に心から "Asante sana. Ninakupenda sana." と思っております。私を支えてくれる皆様のご好意に少しでも答えられるよう、今年は研究の成果を世に出すべく尽力する所存です。<div><br /></div><div>ちょいと固かったですが、今年の抱負でした。\(^O^)/</div><div>今年はブログ更新するぞ。目標週一。</div>Tomboyahttp://www.blogger.com/profile/08243481617421050656noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3161278018579234669.post-74283582738590527282011-06-08T17:34:00.007+09:002011-06-08T20:30:54.221+09:00論文執筆の合間に先週、留学時代の指導教官がナイロビに来ていて、最近の研究の内容をじっくり話す機会があり、久しぶりにアドバイスをもらった。開発経済学系の学術雑誌のEditorを長年やってるだけあって、最近の研究動向をよく知っている。そこで、ここ2日間は彼のコメントを踏まえて、論文のイントロおよび先行研究のセクションを書きなおしている。<br /><br />イントロは一番苦手なところだ。同業者の方は同感してくれると思うけど、分析の記述は簡単なんだよね。式や表を説明するだけだから。でも一番大事なのはイントロ部分、そこで読んでもらえるかどうかが決まるから。次に苦手なのは、先行研究の紹介。このパートでは、これまでに何が分かっていて何が分かっていないかを文献を交えて解説し、論文の売りを強調する。沢山の著作物を有機的に分類し、研究の流れを分かりやすく纏めるって難しい。(沢山読まなければいけないし。)私見だと、サイエンス系に比べて経済学の論文は、この先行文献のパートがとても長い。特に、幅広いテーマを対象とするトップジャーナル(AER, QJE, JPE, etc)は専門が異なる多くの読者がいるだけあって、しっかりと書かれている。なので良いジャーナルを狙うならこの部分も手を抜けない。(Public health関係の仕事をされている方に、経済系のHIV-AIDSのテーマを扱った論文を紹介したら、その長さに驚いていた。)<br /><br />今日の午前中は、論文の筆がなかなか進まないので、参考文献覧に載せているにも関わらず、読んでいなかった有名な古典的論文を読んでみた。有名なので内容は間接的に大体知っているというシロモノ。<br /><br />Hybrid Corn: An Exploration in the Economics of Technological Change by Zvi Griliches in <span style="font-style: italic;">Econometrica</span> 1957.<br /><br />20世紀初頭から半ばまでのアメリカでのハイブリッド・コーンの種の普及について書かれた論文なんだけど、最後の文章は、「アフリカで技術普及がなぜか進まない」という言説を聞く度に私も常々思っていることなので、引用しておく。<br /><blockquote>On the whole, taking account of uncertainty and the fact that the spread of knowledge is not instantaneous, farmers have behaved in a fashion consistent with the idea of profit maximization. Where the evidence appears to indicate the contrary, I would predict that a closer examination of the relevant economic variables will show that the change was not as profitable as it appeared to be.<br /></blockquote>普及しない技術は儲からない(便益が小さい)技術ということ。便益が大きければ普及のスピードも早いんだよね。携帯・モバイルマネーの普及のスピードが、そのことを裏付けている。便利な技術・儲かる技術はアフリカでも普及する。<br /><br />アフリカでも道路・情報ネットワークなどのインフラが格段に良くなってきている。市場・情報へのアクセスが改善され、ある技術・商品が潜在的に儲かる地域が急速に拡大している。つまり、「誰も使っていない」から「皆が使う」状態へ移行するであろう技術が沢山あるってこと。どういう技術・商品がその条件を満たすか、歴史、他の地域の経験がヒントを与えてくれる。今ならアイデア勝負で、成功するビジネスが沢山あるはず。まさに今がアフリカ進出、投資のチャンスだと思いませんか?<br /><br />それにしても、話が大分それたな。こんなんだからliterature reviewが書けないんだ。Tomboyahttp://www.blogger.com/profile/08243481617421050656noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3161278018579234669.post-71749610571657050802011-05-06T14:54:00.005+09:002011-05-06T16:03:38.074+09:00National Council for Science and Technology Annual Conference先日(5/3)知合いに頼まれて、ケニアのNCST(科学技術評議会 or 委員会?)の年総会で発表して来ました。事前にプログラムを頂いていなくて(どうやらプログラムは会議の直前まで完成していなかったらしい。ケニアらしいでしょ。)、どういう会議なのか良く理解しないまま、自分の発表の30分前に会場(Kenyatta International Conference Centre、ナイロビで一番大きな会議場)に到着して、プログラムを見て仰天。私の出番は、なんと、オープニングセレモニーの直後のKeynoteではありませんか。大きな会議室に入ると、高等教育省の大臣、日本国大使館公使、その他お偉いさんがステージ上に着席されていて、NCSTの長官が発表していました。プログラムによると長官の発表の直後に私の出番。聞いてないっす。しかし、意外に落ち着いていて、スーツ着て来て良かったとか思いつつ(直前まで、ジーンズとジャケットで行こうか迷ってた)、折角なので大臣にも発表を聞いてもらいましょうとか思っていました。長官の発表も終盤にさしかかり、流石にドキドキしてきて、深呼吸、深呼吸。その緊張感を「楽しめ、楽しめ」と自分に言い聞かせつつ待機していたら、アナウンスが入り、どうやらティーブレイクが入るらしいことが判明。大臣他お偉いさんらは退場。なんだよ、俺の発表は聞かないのか。少し残念。<br /><br />ティーブレイク後、セッション再会。3割くらいの聴衆はどこかに行ってしまいましたが、いつもの学会よりもずっと多い。30分のつもりで用意してきて、プログラムでも30分割り当てられているのに、セッションのチェアに20分でお願いしますと、しれっと言われ、発表開始。聴衆を見回すと少しざわついていて、あまり聞いてない。とっさにスワヒリ語で挨拶を始めてみました。”Mimi ni Tomoya. Ninatoka Japan lakini sasa ninaishi Nairobi kufanya kazi ya utafiti. Ninataka kuongea kuhusu utafiti ya Uganda leo.” とっさのアドリブでしたが、 効果テキメンで皆こちらに注目してくれました。発表は色々な所ですでに発表している農業の技術普及に関する論文だったので、無難にこなせたと思います。たぶん。発表後、何人かの聴衆が話しかけてきました。皆私がスワヒリ語がペラペラだと思っている。本当は幾つか言い慣れたフレーズがある程度なんですけどね。<br /><br />今回は、何人かのケニア人研究者と知合いになれたので収穫ありでした。Tomboyahttp://www.blogger.com/profile/08243481617421050656noreply@blogger.com1tag:blogger.com,1999:blog-3161278018579234669.post-12197041888348049132011-03-28T22:44:00.004+09:002011-03-29T00:08:58.913+09:00ブログ再開忙しくなるとすぐ更新しなくなり、更新しない期間が長引くと、なかなか再開できなくなる。ブログの「引きこもり」の様な状態が続いてる。なんとも情けない。始めたときはもう少し、軽いネタを書いていたんだが、だんだんと重くなり、終いには「書くからには、私にしか書けないことを誰にでもわかるように書く」という課題を勝手に課して、書けなくなっていた。論文や本を書いているわけじゃないんだから、読者が沢山いるわけでもないんだから、文章を書く練習と、思いついたアイデアの備忘録として、これからは、もう少し気楽に書いてみたい。Tomboyahttp://www.blogger.com/profile/08243481617421050656noreply@blogger.com2tag:blogger.com,1999:blog-3161278018579234669.post-3781349349618904862010-10-14T07:30:00.007+09:002010-10-16T04:07:02.036+09:00民間セクターが担う農業普及活動少し前の話になるが、ケニアのWestern県とNyanza県に視察旅行に出かけた時に、Oyugis*でユニークな活動をしている農業インプット販売店(agrovetもしくはstockistと呼ばれている)の店主(Mr. Innocent)に出会った。店は地方の販売店には珍しく、綺麗に整理整頓されていて、奥に接客用のスペースまであった。雰囲気が少し他の販売店とは違うなと思いつつ、店主に色々話を聞いてみると、経営面で面白い話が幾つも出てきた。忘れないうちに記録しておきたいと思う。<br /><br />彼は店の近所に小さい実験圃場を設置して、そこで新しいインプットや農業技術のデモンストレーションをしていている。時には販売する種子や肥料(あるいは農法)を使う区画と使わない区画を隣り合った場所に設置し、収量を比較するといった対照実験も行っているそうだ。その圃場に月2回程顧客を招待しワークショップを開き技術指導を行い、紹介した種子・化学品・肥料などを販売している。<br /><br />民間セクターでは種子メーカーや流通業者が、商品の販促のためにデモンストレーション農園で技術指導を行う事はあるが、個人経営の販売店が独自に行っているケースは珍しく、驚いた。私が知っているのは高々ウガンダとケニアの事情だが、小売店の農業普及活動はBBCの<a href="http://news.bbc.co.uk/2/hi/africa/8381271.stm">Web記事</a>以外聞いたことが無かった。しかも、商売として成立し顧客も増えているそうで、中々やるもんだと感心した。<br /><br />現代の農業技術は高収量種や化学薬品などの商品に体化しているものが多いので、技術普及が商品の販売と直接結びつくケースが多い。だから商品の販売促進のため、メーカーや販売店が普及活動をするインセンティブはある。ただし、普及活動がメーカーであれば自社製品の販売に、販売店であれば自分の店での販売に繋がらなければならない。普及活動をしても参加した農家が、他のメーカーの似たような商品を買ったり、他の販売店の商品を買ったりしては、利益に繋がらず、意味が無いからだ。だから、メーカーが自社製品を売るためには製品の差別化が必要で、メーカーが実施する普及活動ではその製品の違いをアピールしている。一方、製品の差別化が出来ない販売店では、Innocentの店で行っている様に、顧客登録をしてもらい顧客の囲い込みが必要である。顧客を囲い込むためには、ある程度顔の見える関係を築くこと大事なので、Oyugisがあまり大きな街でないのも、成功している理由かもしれない。<br /><br />販売店による普及活動と商品販売の抱き合わせのビジネスモデルの成功ケースを見ると、逆に、何故これまでやられていなかったんだろう、また、何で他の店はやらないんだろうという疑問が湧く。<br /><br />これまでこうした販売店がなかった理由は、ビジネスモデルも一種のイノベーションなので、そうしたアイデアを思いつき実践する人がこれまで居なかった、ということだろう。ただし、マーケットが、これまで以上にそうしたビジネスモデルが成功し易い環境へと変化しているのも事実だ。ケニアでも多くの地域で道路が良くなり市場へのアクセスが改善しているし、土地の稀少性が増し単収を上げる技術への潜在的な需要も高まっている。つまり、技術のリターンが以前より大きくなっているのだ。<br /><br />他の販売店の中から追随者が出てくるがどうかは、先駆者の成功に掛かっているが、私は、Innocentの店の成功で、似たようなことを始める店が多数出て来るのではないかと予想している。どの地域でも上手く行くとは思わないが、上手く行く地域では、公的機関が行う普及活動よりも技術普及に貢献するだろう。<br /><br />一般に公的機関が担う農業普及は、その非効率性が問題になることが多い。普及員があまり活動しない、あるいは、技術を紹介してもなかなか普及しないという話は良く聞く。前者は、普及員のインセンティブ・システムの構築が困難なことに起因する。後者は、紹介する技術が農民の利益に繋がらない場合が儘あるからだと思う。ある技術が儲かるか儲からないかは場所とタイミングに大きく左右されるので、プランナーによる技術の選択は容易ではない。更に、公的資金や援助で行われる場合、紹介される技術がその場所に不適合でも普及活動はしばらく続く。こうした要因で、公的な農業普及の効率性が上がらないのだ。<br /><br />少なくとも、農業のポテンシャルのある地域では、農業技術の普及に対する民間部門の役割は大きくなっていくだろう。<br /><br />もう一つInnocentの店で驚いたのは、彼の店では登録した優良顧客に対し、商品の信用売りをしていたことだ。担保はとらず、無利子で、支払いは収穫の後で良いという、何とも気前の良いサービスを提供していた。しかも、去年の旱魃で収穫がほとんど台なしだった時は、返済を更に1シーズン待ってあげたそうだ。信用売りをする顧客の条件は、顧客登録後6ヶ月以上たっていて、ワークショップに参加し、やる気のあるヤツだそうだ。信用売りを始めた当初は、貸し倒れが何件かあったそうだが、現在の貸出ルールを確立してからは、貸し倒れは殆ど無いらしい。ここでも、顔の見える関係を構築していることが、このシステムが機能する重要な要因になっているようだ。現金を貸すのとは違い、無駄遣いする可能性がある訳ではないので、どういう人物でどの位の土地・資産を持っているかが分かれば、返済できるかどうかの判断は難しくない。経済学で言うところの、貸し手と借りての間の情報の非対称性(貸し手が借り手のタイプが分からない)による逆選択の問題が小さいケースなのである。 <br /><br />今回の視察旅行でMr. Innocentと会えたお陰で、技術普及・小規模金融の発展の鍵は民間に有ということを再確認した。<br /><br />*OyugisはKisiiから車で北へ30分くらいの所にあるNyanza県の街である。Tomboyahttp://www.blogger.com/profile/08243481617421050656noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3161278018579234669.post-88744035351557212382010-09-24T18:52:00.005+09:002010-10-17T23:42:23.431+09:00穀物保険(Kilimo Salama)の現状視察以前のポストで紹介した天候インデックス型穀物保険(Kilimo Salama)の現状を知るために、9月14日から4日間WesternとNyanza方面を回って、保険を取り扱っている農業インプット販売店を訪問し、話を聞いてきた。<br /><br />以下聞き取りの内容を中心に、Kilimo Salamaの現状を述べる。<br /><br /><span style="font-weight: bold;">Kilimo Salama の特徴</span><br /><br />1. 天候インデックス穀物保険である。対象の穀物はメイズと小麦で、保険加入者に対し、旱魃(drought)と超過雨(excess rain)の場合に保険金の支払いが行われる。保険金支払の判定は保険購入者の最寄の天候観測所のデータを元になされる。<br />2. 農業インプットとの抱き合わせで販売される。保険はインプットコストの5%を支払うことで加入できる。保険金は最大でインプットコストの100%を補償する。<br />3. 保険加入が農業インプット販売店でのモバイル操作で完了する。書類への記入などは必要ない。<br />4. 保険金がモバイル・マネー(M-pesa)で支払われる。<br /><br /><span style="font-weight: bold;">Kilimo Salama の展開</span><br /><br />Kilimo Salamaのパイロット・プロジェクトは2009年の2−3月にNanyukiで始まり、今年(2010年)の2−3月から他の地域でも展開を始めた。耕作期が2期ある地域では、この8-9月にも販売されている。<br />現時点で、36店舗でKilimo Salamaの販売が行われおり、延11,000人の顧客が保険を購入している。<br /><br />訪問した販売店で、保険購入者数、掛け金の合計額を聞き取りしたが、記録をつけている販売店が少なく、大まかな数字しか分からなかった。ただし、まだまだ保険加入率は非常に低い。販売員へのインタビューでは、加入率が低い理由として、認知度が低い、保険に対して良いイメージを持っていない等が挙げられた。認知度を上げるための活動としては、ラジオ番組・新聞での告知、農民グループを対象とするワークショップでの宣伝、店頭での宣伝という方法が取られている。<br /><br />穀物保険の存在を知っていたとしても、その多くがまだ様子を伺っているようである。Busiaに近いFunyulaのAgrovetで聞いた話によると、今年の第一耕作期に保険購入者に対し払い戻しがあり、第二耕作期に加入者が急増した、ということがあったそうだ。逆に払い戻しが無く、次期の加入者が減少するというケースもあり得る。幾つかの販売店で、加入者から天候不良なのに保険金支払がない、というクレームがあったと言う話も耳にした。<br /><br />現時点では、加入率が低く、販売した保険額も小さく、ビジネスとして成立するレベルでは無い。今後しばらくの間は、援助機関のサポート無しでは運営は困難なように思う。また、農民への効果も限定的で、保険商品を改善していく必要性がありそうだ。例えば、掛け金が高くて、保険金額も大きいという商品があったら良いという声があった。<br /><br /><span style="font-weight: bold;">Kilimo Salama の対象地域</span><br /><br />現在、保険販売を行っている農業インプット販売店(agrovet)の所在地は以下の通りである。(それぞれの地域の取り扱い店の数、天候観測所の数を括弧内に分かる範囲で示した。)保険の対象となる農家は最寄の観測所から直線距離で20km以内とされている。ただし、最寄の観測所は保険加入者の自己申告によるので、範囲外でも購入は可能。<br /><br />Central県<br />Embu<br /><br />Western県<br />Busia /Bungoma (取扱店:12店・観測所:7箇所)<br /><br />Rift Valley県<br />Eldoret (取扱店:9店・観測所:7箇所)<br /><br />Nanyuki<br /><br />Nyanza県<br />Oyugis/Homa Bay(取扱店:9店・観測所:5箇所)<br /><br />今回聞き取りを行ったのは、上記のうちEldoret(2店)・Bungoma(2店)・Busia(3店)・Oyugis(2店)。<br /><br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://3.bp.blogspot.com/_aqCFnJBz0io/TJx0-HXo40I/AAAAAAAAAJM/2_RGq26KcEE/s1600/KilimoSalamaTrip.jpg"><img style="display: block; margin: 0px auto 10px; text-align: center; cursor: pointer; width: 320px; height: 235px;" src="http://3.bp.blogspot.com/_aqCFnJBz0io/TJx0-HXo40I/AAAAAAAAAJM/2_RGq26KcEE/s320/KilimoSalamaTrip.jpg" alt="" id="BLOGGER_PHOTO_ID_5520415853728293698" border="0" /></a><br /><div align="Center">今回の旅の軌跡<br />走行距離約1500km</div>Tomboyahttp://www.blogger.com/profile/08243481617421050656noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3161278018579234669.post-27478088003699291832010-08-30T21:39:00.025+09:002010-09-07T18:14:04.932+09:00ウガンダの中等学校(セカンダリースクール)無償化政策先週、またまたウガンダに行ってました。最近は農業関連のプロジェクトばかりに携わっていましたが、今回はがらりと趣きを替えウガンダの教育事情の視察に、主に中等学校を訪問し、学校関係者に話を聞いてきました。<br /><br />今回我々が注目していたのは、2007年に始まった中等学校(前期)の無償化政策*(Universal Secondary Education、以下USEと記す)です。これまで行ってきたウガンダでの農村家計調査の対象地域の中等学校を中心に周り、その政策が子供たちの教育に、学校に、また地域にどういう影響を与えたのか、色々と見聞きしてきました。アポイントもなく訪問した珍客に先生・事務の方々は大変親切に対応してくれました。<br /><br />ウガンダの初等中等教育システムは、初等学校(プライマリースクール)が7年間、中等学校の前期(O-level)が4年間、後期(A-level)が2年間となっています。生徒は初等学校の最終年で統一テスト(Primary Leaving Examinations)**を受け、パスすると中等学校へ進学できます。進学すると中等学校前期の最終年でまた統一テスト(Uganda Certificate of Education)があり、その成績に応じて中等学校後期への進学の資格が取得できるかどうか決まります。後期に進学した生徒は最終年(2年目)に統一テスト(Uganda Advanced Certificate of Education)を受け、その成績をもとに希望の大学・学部へ進学できるかどうかが決まります。後期へ進学しない又はできない生徒は、職業学校(教員養成学校を含む)やその他専門学校へ進学するか又は働くかを選択をします。<br /><br />USE政策の対象となる生徒は、07年以降に中等学校へ進学した中等前期の生徒で、かつ初等科7年生で受けたPLEの合計スコアが、28ポイント以下の生徒達です。PLE受験者の約70−80%の生徒は、そのUSE適用基準をクリアします。ただし、無償化政策以降も、全ての公立校で授業料が無料になったわけではなく、政府の助成を受け取る学校(USEスクール)とそうでない学校(非USEスクール)があり、非USEスクールの生徒は、PLEの成績がUSE基準を満たしていても、授業料を支払います***。<br /><br />今回の調査旅行では、カンパラ以東の中等学校を12校回りましたが、USEに対する教育関係者・地域住民の評価は高く、大雑把に集約すると「改善の余地は大いにあるが、良い政策だ」ということになります。特に、これまで金銭的理由で中等学校に行くのが困難だった貧しい家計の生徒に、進学できる機会が与えられた事を評価する声が多かったです。とは言え問題も多い政策です。一番の問題は、教育の質の低下の問題です。生徒数の急増に教員数・施設の拡充が追いついていない学校が多く、話を聞いた学校でも1クラスに100人以上という学校が幾つもありました。また、採点作業等の負担の増加で、教員の授業へのモチベーションが下がった、生徒の増加に伴いやる気のない生徒も増え、生徒の学力レベルが下がった、という話も聞かれました。教員不足で特に深刻なのは、理数系科目です。1学年の生徒数が100名以上の中規模の学校でも、数学・物理・化学などの教科を担当する常勤の教員が一人もおらず、非常勤教師で対応している学校が幾つもありました。ただし、理数科教員不足は、ウガンダ特有の問題ではなく、ケニアその他のアフリカ諸国でも同様の問題を抱えているようです。(知人がケニアで<a href="http://www.jica.go.jp/project/area/africa/515_1.html">理数科教育強化プロジェクト</a>で奮闘しています。)一般に労働市場において理工系出身者に対する需要が高く(その割に供給が少なく)、理工系出身者は教育界以外により良い就業機会があるということの証左だと思われます。<br /><br />USE校の教育の質の低下に伴い、当然の反応として、金銭的な余裕がある家庭では子供を非USE校へ送ります。因みに、ウガンダでの我々の調査のカウンターパートであるマケレレ大学の調査チームの面々の子息も、皆例外なく、USE校ではなく、私学か公立非USE校に通わせています。日本の学区制の様な制度は存在しないので、金銭的な余裕がありさえすれば、学校の選択は全くの自由で遠方の学校に子供を送るというのも一般的です。学校選択が自由なので、特に私学では学校の評判を上げるのに苦心しているようです。学校の成績を上げるためにUSE校の優秀な生徒を、ヘッドハントし特待生として受け入れるケースもあると聞きました。<br /><br />ウガンダの初等・中等教育の概要を把握するのに、幾つかの指標のトレンドを教育省の公式統計から拾ってみました。以下のグラフは初等・中等学校の生徒数・教師数・学校数の2000年の値を1と基準化して、その後の変化示しています。<br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://2.bp.blogspot.com/_aqCFnJBz0io/TIUDw137FfI/AAAAAAAAAI0/RixEWnkl2_4/s1600/UgandaEducation.png"><img style="display: block; margin: 0px auto 10px; text-align: center; cursor: pointer; width: 400px; height: 244px;" src="http://2.bp.blogspot.com/_aqCFnJBz0io/TIUDw137FfI/AAAAAAAAAI0/RixEWnkl2_4/s400/UgandaEducation.png" alt="" id="BLOGGER_PHOTO_ID_5513817456415282674" border="0" /></a><br /><div align="center"> 初等・中等教育に関する指標の変化<br />(2000年値=1, 初等教育指標:破線, 中等教育指標:実線 )<br /> Source: Ministry of Education and Sports </div><br /><br />USE政策は07年に開始したのですが、グラフをよく見てみると、導入前05年くらいからトレンドが変化し、急激な増加傾向を示しています。(01年から05年で中等学校数が減少しているが、どうやら教育省のデータの不備のせいで、実際には増えているようだ。)生徒数が導入以前から増加しているのは、97年導入のUPEの裨益者達が初等学校を卒業し、中等学校へ進学するケースが増えたためと思われます。(ムセベニ大統領が06年の大統領選のキャンペーンで、USEを公約していたので、USE導入を期待して進学した生徒もいると思われます。ただし、07年より前に入学した生徒にはUSEは適用されていません。)教員数も学校数も増加しておりますが、生徒の増加には追いついておらず、09年の生徒・教員比率(1,194,454(生徒数)/65,045(教師数))は18.4人で、00年と比較し悪化しています。(教師数は常勤と非常勤を区別していないので、複数校掛け持ちの非常勤教師をダブルカウントしているものと思われます。インタヴューした限りでは、複数校掛け持ちの非常勤教師は相当いました。)<br /><br />今年は、07年のUSE導入後入学した生徒達が統一テスト(UCE)を受ける年で、10月・11月に行われるテストの結果が来年の初めには明らかになります。USE校と非USE校とのUCEの成績の違い、前年度との成績の比較などUSE政策の教育の達成度への影響が客観的に評価されることになります。(ウガンダの友人は公表されるデータは意図的に操作せれているだろう、と言ってますが…。)研究の題材として色々なネタを提供してくれそうなウガンダの教育部門には、しばし注目してみたいと思います。<br /><br />*因みに初等学校の無償化政策(Universal Primary Education)は、1997年に始まり、公立校では原則授業料は無料となっている。UPEもUSEも大統領選での公約で、大統領選挙後に実施された。<br /><br />** PLE証書を取得するのに必要な筆記試験で、英語・数学・科学・社会の4教科からなり、それぞれの科目で、1(最高評価)から9(最低)のスコアが与えられ、それらの合計点でGradeが決まる。合計で4-12ポイントがGrade1、13-23がGrade2、24-29がGrade3、30-34がGrade4となっています。Grade1-4の受験者にはPLE証書(Certificate)が授与され、進学の資格が与えられる。下の円グラフは09年のPLE受験者のGrade毎の割合を示している。(なお、受験者数データは<a href="http://allafrica.com/stories/201001190865.html">New Vision</a>の記事から拾ったが、パーセンテージが記事と微妙に合わない。受験者数の間違いか、パーセンテージの計算間違いのいずれかであるが、新聞記者のご愛嬌ということで見逃して欲しい。新聞記事も(公式統計も)端から信ずるべからず。)<br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://4.bp.blogspot.com/_aqCFnJBz0io/TIT5a52yixI/AAAAAAAAAIc/nP_Fc4Vkrlg/s1600/UgandaPLE09.png"><img style="display: block; margin: 0px auto 10px; text-align: center; cursor: pointer; width: 320px; height: 195px;" src="http://4.bp.blogspot.com/_aqCFnJBz0io/TIT5a52yixI/AAAAAAAAAIc/nP_Fc4Vkrlg/s320/UgandaPLE09.png" alt="" id="BLOGGER_PHOTO_ID_5513806084410870546" border="0" /></a><br /><br />***一般に、公立でも元々高い授業料を課していた進学校などは政策の適用外となっている。また、私立校の中にも、USE助成を受けるUSEスクールがある。地域に公立のUSE スクールが少なく、かつ学校運営に関して一定の基準(例えば、先生の数、施設の充実度)を満たしてる場合は助成の対象になるようだ。(公式の採用基準については、現在資料を収集中。)USEスクールは、一学期あたり公立校で生徒一人につき41,000USH(約1,535円)、私立校で47,000USH(約1,760円)を受け取り、生徒からの授業料の代わりに学校運営費として運用する。公立のUSE校で助成額が少なくなっているは、USE助成の他にフルタイムの教師の給与が政府より支払われるためである。なお、学校年度(school year)は2月に始まり、12月初めに終わる。3学期(term)制である。USE助成は3月中旬に行われる教育省による人数調査(head counting)に基づき支給される。今回の学校関係者へのインタヴューの中で、政府からの支払いが遅れるため、しばしば学校運営の支障をきたすと発言する方が多かった。<br /><br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://2.bp.blogspot.com/_aqCFnJBz0io/TIT6cnVxXKI/AAAAAAAAAIk/ZqZAcYzPcRQ/s1600/SciLab.jpg"><img style="display: block; margin: 0px auto 10px; text-align: center; cursor: pointer; width: 320px; height: 240px;" src="http://2.bp.blogspot.com/_aqCFnJBz0io/TIT6cnVxXKI/AAAAAAAAAIk/ZqZAcYzPcRQ/s320/SciLab.jpg" alt="" id="BLOGGER_PHOTO_ID_5513807213311909026" border="0" /></a><br /><br /><div align="center">理科室。</div><br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://3.bp.blogspot.com/_aqCFnJBz0io/TIT6kLwwvMI/AAAAAAAAAIs/5Z_9JNdZmxM/s1600/Dorm.jpg"><img style="display: block; margin: 0px auto 10px; text-align: center; cursor: pointer; width: 240px; height: 320px;" src="http://3.bp.blogspot.com/_aqCFnJBz0io/TIT6kLwwvMI/AAAAAAAAAIs/5Z_9JNdZmxM/s320/Dorm.jpg" alt="" id="BLOGGER_PHOTO_ID_5513807343347875010" border="0" /></a><br /><br /><div align="center">女子寮。土間の上に何と3段ベッドが並んでいた。</div><br /><br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://2.bp.blogspot.com/_aqCFnJBz0io/TIWTWmDUuoI/AAAAAAAAAI8/C1cOFs5bEHs/s1600/SchoolSurvey201008.png"><img style="display: block; margin: 0px auto 10px; text-align: center; cursor: pointer; width: 320px; height: 157px;" src="http://2.bp.blogspot.com/_aqCFnJBz0io/TIWTWmDUuoI/AAAAAAAAAI8/C1cOFs5bEHs/s320/SchoolSurvey201008.png" alt="" id="BLOGGER_PHOTO_ID_5513975335165934210" border="0" /></a><br /><br /><div align="center">今回の旅の軌跡</div>Tomboyahttp://www.blogger.com/profile/08243481617421050656noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3161278018579234669.post-23589467949262887092010-07-05T23:36:00.005+09:002010-07-06T01:06:17.160+09:00M-Kesho (モバイルバンク口座)Safaricomのモバイル・マネー絡みで新しいサービスが始まった。<a href="http://tom-matsumo.blogspot.com/2009/12/blog-post_12.html">以前のエントリー</a>でM-Pesa(ケニアのモバイル・ネットワーク・プロバイダーであるSafaricomがサービスを提供しているモバイル・マネー)を紹介したが、今度はEquity Bankと組んで、<a href="http://www.safaricom.co.ke/index.php?id=1411">M-Kesho</a>なるサービスを開始した。因みに"Kesho"は「明日」という意味のスワヒリ語。このサービス・アカウントはM-Pesa口座をもつ利用者であれば開設できる。(今のところ、National IDが必要で、PassportやAlien IDでは開設出来ないよう。)<br /><br />M-Pesaが送金手段であるのに対し、M-Keshoは銀行口座で、預金には利子もつくし、小口(5,000Kshまで)の短期融資(30日間)の申請もできる。なお、申請が受理されるかどうかは、個人のクレジット履歴で判断される。利用者はM-Pesa口座とM-Kesho口座間の預金の振替、ローン申請、生命保険の加入など、色々な金融サービス取引を携帯電話のSMSで行うことができる。M-Pesa口座に移した預金は、通常のM-Pesa預金なので、M-Pesa取り扱いブースで現金化したり、SMSで送金したりできる。<br /><br />預金に利子がつくだけじゃなく、小口融資の申請が簡単に行えるのは、日頃、小額の運転資金の工面に悪戦苦闘している町の物売りや零細企業にとっては非常に魅力的だ。モバイル技術の発展で、小口の金融サービスの取引費用が激減したために、個人商店主も零細農家もそうしたサービスの恩恵を受けられる様になってきた。今、ケニアの金融サービスの展開は目を離せない。ケニアの経済が10年後どうなっているか、非常に楽しみである。<br /><br />追記:この金融サービスが可能になったのは、最近金融サービスに関する法律が改正されたからのようですが、同じ議会で<a href="http://tom-matsumo.blogspot.com/2010/07/blog-post.html">価格統制法が可決</a>されてたのは非常に頂けない。Tomboyahttp://www.blogger.com/profile/08243481617421050656noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3161278018579234669.post-72446943740133856242010-07-03T00:04:00.005+09:002010-07-05T14:01:24.541+09:00価格統制法先週、ケニア議会でトウモロコシ・麦・燃料などの必需品の価格を統制する法案が可決されました(<a href="http://ht.ly/22zA2">Daily Naitionの記事</a>)。キバキ大統領が署名をすると施行されるようです。昨年の第一耕作期がひどい旱魃で、穀物価格が高騰し国民から不満の声が上がりました。それに反応した議員が去年議会に法案を提出していたようです。<br /><br />価格統制の弊害は、経済学の初歩の初歩で習いますし、歴史が沢山の実例を示しています。なぜこんな法案が議会をあっさり通ってしまったのか疑問です。(たとえマトモな経済顧問がいないとしても、ドナー各国の関係者がイチャモンをつけそうなものですが…)<br /><br />農産物の最高価格を設定すると、不作で供給が減ったとき、その値段で買いたくても手に入らない消費者が出てきます。その帰結として考えられるのは、i)一部の人々が特権的に生産物を取得し、店から商品が消える、ii)闇市ができて違法に取引される、iii)高値で取引されている近隣諸国に生産物が流れ、国内供給量がさらに減る、そんな所でしょう。更に、生産者側もこの法案に反応するでしょう。まず、対象作物が高値で売れなくなりますから、そうした作物の栽培のインセンティブが減り、供給が減ります。次いで、肥料や高収量品種などの農業インプットへの投資のリターンも下がりますから、投資を控えるようになり、生産性が下がり更に供給が減り、品不足に陥ることが予想できます。<br /><br />勿論、価格規制が社会厚生を引き上げるケース(規制対象の財が、独占的に供給されていて価格が限界費用を超えている場合のみ)もありますが、どう考えてもケニアの農産物はそうしたケースには当てはまらないでしょう。<br /><br />キバキ大統領はLondon School of Economicsで経済学を学んだそうですので、学んだことを活かして、是非ともこの法案を廃案に持ち込んで欲しいものです。Tomboyahttp://www.blogger.com/profile/08243481617421050656noreply@blogger.com1tag:blogger.com,1999:blog-3161278018579234669.post-46595814792452914792010-05-11T20:26:00.018+09:002010-06-15T20:08:14.825+09:00指紋押捺と借金回収<a href="http://tom-matsumo.blogspot.com/2009/12/blog-post_12.html">以前のエントリ</a>でも紹介しましたが、ケニアではモバイル・マネー(m-pesa)の急速な普及で、距離を隔てた個人間の金銭の受け渡しがここ2、3年で革命的に容易になりました。送金に掛かる手数料も少ないので、小額のやり取りにも使われます。これからは、今まで取引費用が高すぎて現実的では無かった小規模農家を対象にしたマイクロ信用・マイクロ保険などの金融サービスが色々出てくるのは間違いないでしょう。mpesaで貸してmpesaで返済してもらう、というのは技術的にすでに可能ですから、如何に低い費用で返済率の高いシステムが構築できるかで、マイクロ金融が今後発展するか否かが決まってきます。もし、小規模農家を対象とした低利のマイクロ金融が展開したら、信用制約の問題も緩和されアフリカ農村が変わるかもしれません。モバイル技術の発展でその期待はどんどん膨らんでいます。<br /><br />そんな経緯で最近、どうしたらマイクロ金融の返済率が高まるかを調べています。「お金を貸すときに借りる人から指紋を取ると返済率が上がる」というのが今日読んだ Gine, Goldberg, Yang(2009)の実証的なファインディング。ちなみにGine and Yang (2008, JDE) は <a href="http://d.hatena.ne.jp/hisakijapan/20081210/1228919375">hkono氏のブログでも紹介</a>されています。著者らはアフリカのマイクロ金融に関する研究課題をフィールド実験を使って実証した論文を幾つか書いていて、今回の論文もその一つです。<br /><br />今回のフィールド実験はマラウィで試験的に行われた契約農業プロジェクト*の対象農家に対して行われたもので、農業インプットの掛売の集金を効率的に行う方法を検証しています。まず、1グループ15人から20人で構成されている契約農家を、グループ単位で無作為に治験群と対照群にわけます。対象農家はプロジェクトからパプリカ生産のための農業インプット(肥料・種・農薬等)0.5から1エーカー分を掛買いできますが、シーズン終了後に利息分と合わせて返済する必要があります。もし返済しなかった場合、今後掛買いの機会を失いますが、きちんと返済した場合、より高額の借入が可能になります。借入・返済のルールがいわゆる動学的インセンティブシステムに成っています。こうした共通のシステムの下、治験群の農家には借入時に、電子的に指紋のスキャン画像を取ることを要求し、対照群の農家には要求しない、という差別化をします。そして、シーズンの収穫時期後に集金を行い、2つのグループ間で返済率がどの程度違うかを計測し、指紋押捺の借金回収の効果を検証しています。更に、貸し倒れリスクの高いタイプの農家とそうでないタイプの農家で、指紋押捺の効果に差があるかどうかも検証しています。<br /><br />結論は、貸し倒れリスクの高いタイプの農家の返済率への影響は大きく、統計的に有意な効果があるが、そうでないタイプの農家は小さく有意な効果はない、というものでした。この結果は、指紋押捺することで、個人認証がより正確にできるようになるため、特に貸し倒れリスクの高い農家にとって、動学的インセンティブシステムがより機能するようになる、つまり、契約不履行の場合の将来の借り入れ機会喪失という脅しが、空脅しではなく確かな脅しとして機能するようになり返済率が高まる、と解釈できます。<br /><br /><br />*パプリカ(香辛料の原料)の輸入・加工・販売を行っているオランダの企業<a href="http://www.cheetahpaprika.com/">Cheetah Paprika Limited</a>(CP)が、政府系金融機関のマラウィ地域金融法人(Malawi Rural Finance Corporation (MRFC))と共同で2007年に行ったプロジェクト。Tomboyahttp://www.blogger.com/profile/08243481617421050656noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3161278018579234669.post-31555581784273924032010-05-05T20:33:00.011+09:002010-06-15T21:50:16.943+09:00Kilimo Salama(安全な農業)エントリのタイトルの”Kilimo Salama”というのはスワヒリ語で「安全な農業」という意味ですが、<a href="http://www.uapkenya.com/">UAP</a>と<a href="http://www.syngentafoundation.org/">Syngenta Fundation</a>が肥料輸入販売会社の<a href="http://www.mea.co.ke/">MEA</a>、モバイル・ネットワーク・プロバイダーの<a href="http://www.safaricom.co.ke/">Safaricom</a>、<a href="http://www.meteo.go.ke/index.html">ケニア気象局</a>、NGOの<a href="http://www.cnfa.org/aboutus/our-history/156-kenada-launch?Itemid=109">CNFA/AGMARK</a>の協力の下、試験的に販売を始めたメイズ・小麦農家を対象とする穀物保険のことです。最近幾つかのメディアで取り上げられていて(<a href="http://www.nation.co.ke/magazines/money/Let%20down%20by%20vagaries%20of%20weather%20Here%20is%20a%20cover%20to%20hide%20under%20%20/-/435440/876626/-/iha0jdz/-/index.html">Daily Nation 2010/03/10</a>, <a href="http://www.economist.com/business-finance/displaystory.cfm?story_id=15663856">Economist 2010/03/11</a>)ずっと気になっていました。<br /><br />そこで、先日その保険を販売しているUAP保険本社(在ナイロビ)を訪問し、穀物保険のプロジェクトの担当者に会って穀物保険について話を伺ってきました。<br /><br />この保険商品の特徴はi)天候インデックス保険であること、ii)モバイル技術を使用し、携帯のSMS通信で保険契約を取り交わすこと、iii)保険金がモバイル・マネー(m-pesa)で支払われることにあります。<a href="http://tom-matsumo.blogspot.com/2009/12/blog-post_12.html">以前のエントリ</a>でも紹介しましたが、ケニアではネットワーク・プロバイダーであるSafaricomのモバイル・マネー"m-pesa"がこの2、3年で急速に普及し、農村でも浸透し、m-pesaを利用した金融サービスが農村でも技術的には利用可能な状況にあるのです。<br /><br />「天候インデックス」というのは雨量、日照時間、湿度というような天候に関する公に観察可能な客観的な指標です。この天候インデックスに保険金支払いの基準を関連付けた保険商品が、天候インデックス保険です(<a href="http://d.hatena.ne.jp/hisakijapan/20090731/1249008708">hkono氏のblogにインデックス保険について詳しい説明あり</a>)。従来の保険だと保険業者が保険加入者の損害の程度を調査して、その結果を予め決められた保険金支払の基準と照らし合わせて、保険金支払額が決まります。一方、インデックス保険の場合、個別の損害調査は必要なく、天候観測所のデータを定期的に収集しさえすれば、保険金支払額を決定するための情報が集まります。<br /><br />”Kilimo Salama”は天候インデックス保険であることに加え、携帯電話で保険契約・支払に掛かる取引が完了するものなので、保険金支払いのための被害の個別調査は必要ありません。また、掛金の回収・保険金の支払いのために保険業者の担当者がわざわざ保険加入者を訪問する必要もありません。そのため保険契約に掛かる取引費用が激減しました。そのお陰で、小規模農家を対象とする掛金のとても小さな商品でも民間のサービスとして提供可能になったのです。<br /><br />この保険商品は、農業インプットとの抱合せという形で販売されていて、農業インプットの販売店で、肥料・種子・薬品を購入するときに、加入できます。掛金はインプットのコストの10%なのですが、その内の5%は農業インプットの販売会社が支払うことになっているので、実際農民が支払う掛金はインプットコストの5%です。保険はインプットのコストをカバーしていて、旱魃や大雨などで天候インデックスがある基準範囲から乖離した場合、農民の購入したインプットの代金がm-pesaを通じて払戻される仕組みになっています。<br /><br />この商品の普及の一つのカギは、他の保険商品と同様、掛金を抑えつつ如何に損失リスクを軽減させるか、にあります。そうするためには、天候インデックス穀物保険の場合、穀物の単収と強い相関もった天候インデックスを採用する必要があります。これは、極端なケースを考えると分かりやすい論理です。例えば、天候インデックスが収量と無相関の場合、その保険商品はギャンブルと同じで、天候による損失リスクを軽減しませんから、リスクを嫌う農民は加入しません。逆に完全に相関している場合、損失リスクが確実に軽減しますから、同じ掛金・保険支払のもとでより多くの農民が加入します。<br /><br />"Kilimo Salama"では、降水量を天候インデックスとして採用していますが、色々と問題点もあるようです。まず、雨量の観測点から離れるにつれ、雨量のレベルが違ってくる。地形によっては、少しの距離の違いでも、雨量が大きく異なることがあるようです。この場合観測点のそばでは、天候インデックスと単収の相関が高いのに、離れるにつれて相関が大きく低下するという問題が発生します。この問題を緩和するために、試験販売の対象地域に一機約4,000USDの観測機械を30台設置したそうです。この観測機械は、天候情報を収集し15分毎にモバイル・ネットワークを通じてデータセンターに自動送信するようになっています。<br /><br />もう一つの問題は、保険会社が掛金・保険金支払額・支払い基準などの契約内容を策定するにあたり、対象地域の多くの地点で過去の雨量・収穫量の正確なデータが必要なのですが、そうしたデータが中々ないことです。そうしたデータは損害予測をするのにとても重要です。正確なデータがないと損害予測の誤差が大きくなり、保険商品の契約内容の策定が難しくなります。例えば、掛金が高くなりすぎたり、保険金支払い額が少なすぎたり、支払い基準が厳しすぎたりすると、農民にとって魅力的な商品ではなくなります。また、そうした内容を甘くしすぎると、保険会社の損失が大きくなり、持続可能なサービスではなくなります。"Kilimo Salama"はまだ試験的な販売なので、こうした点に関しては試行錯誤の段階のようです。<br /><br />農業インプットの改良で旱魃に強い品種などが開発されており、極端な旱魃などにならない限り、在来種よりも収量が多く、更にその変動も少ない改良種などもあります。極端な天候の場合の損失リスクが軽減するような保険商品は、改良種などの技術普及へ大きなインパクトを与えるものと思われます。今後の展開を見守っていきたいと思います。追加情報があれば、また報告します。Tomboyahttp://www.blogger.com/profile/08243481617421050656noreply@blogger.com2tag:blogger.com,1999:blog-3161278018579234669.post-20925302928121814032010-04-23T14:13:00.018+09:002010-04-26T17:15:46.135+09:00キリマンジャロと小規模灌漑知合いが実施しているキリマンジャロの麓の小規模灌漑プロジェクトを見学に行きました。<br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://2.bp.blogspot.com/_aqCFnJBz0io/S9Ffeyaf05I/AAAAAAAAAGw/lWe_Ssy7rEw/s1600/IMG_6505.jpg"><img style="display:block; margin:0px auto 10px; text-align:center;cursor:pointer; cursor:hand;width: 320px; height: 240px;" src="http://2.bp.blogspot.com/_aqCFnJBz0io/S9Ffeyaf05I/AAAAAAAAAGw/lWe_Ssy7rEw/s320/IMG_6505.jpg" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5463252805510747026" /></a><br /><div align=center>建設途中の水路とキリマンジャロ<br />水路1メートル建設のための資材費用:2千シリング(約2400円)</div><br /><br />農業省の一つの部署だった灌漑・排水課(branch)が、2003年の省庁再編で水灌漑省の灌漑・排水局(department)に格上げされたことが示唆するように、ケニア政府は安定的な食料生産、農業生産性の増大、そして農民の生活改善の手段として、灌漑に以前にも増して着目しています。というのも、ケニアは国土の約80%が乾燥・半乾燥地域に分類される乾いた国ですから、天水に頼って安定的に農作物を生産できる地域が、限定されています。天水農業が可能なところは一般に人口密度が高く、そのために一戸あたりの作付面積が小さいので、少ない土地でできるだけ収穫量を増やすような技術(化学・有機肥料、高収量品種など)は、20年以上前からすでに取り入れられています。そうした地域で今後生産性を飛躍的に高めることは難しいでしょう。乾いた地域が多く、天水で農業が出来るところも、もうその潜在力をかなり使いきっている、という状況ですから、農業生産を増大させるためにできることは限られています。数少ない選択肢の一つが半乾燥地域への灌漑です。雨量は少ない(または不安定だ)が近くに水源が確保できる地域に灌漑施設を建設して、安定的に農業生産が可能な地域にする、というものです。<br /><br /><a href="http://www.fao.org/nr/water/aquastat/dbase/index.stm">FAOのAQUASTAT</a>によると、灌漑可能なエリアは539千へクタール(耕作面積全体の9.5% 2003年統計)で、1993年の時点でその12%(66.6千ha、耕作面積の1.2%)、2003年の時点でその19%(103千ha、耕作面積の1.8%)のエリアで灌漑が敷設されています。また、水灌漑省の2005年の水開発報告によると、近年増加率が最も高いのが今回見学させて頂いたタイプの灌漑で、小規模農家が集まって作った水管理組合が運営する、いわゆる小規模灌漑です。その敷設面積は2003年に民間の商用灌漑施設(この分類の定義に関する説明はありませんでしたが、おそらく園芸作物などを生産する私企業・大規模農家の灌漑施設)の面積を抜いています。<br /><br />小規模灌漑のウェイトが高まっているのは、1)初期投資額が小さいこと、2)比較的少数のお互いに近隣に住む受益者達が自主的に管理運営するので「フリーライダー」の問題や「共有地の悲劇」的な問題が小さいこと、3)一般にローテクを使うので自分たちで維持管理ができること、等の理由が上げられます。とは言え、やはり零細農家が全く自前で自主的に始めるというケースは少なく、多くの場合は政府や援助機関またはNGOが初めに資金的・技術的に手助けをし、軌道に乗ったら農民達に任せると行った形式で行われています。<br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://3.bp.blogspot.com/_aqCFnJBz0io/S9G_6JBPxEI/AAAAAAAAAHA/JK3VfXM3IZw/s1600/irrigation.png"><img style="display:block; margin:0px auto 10px; text-align:center;cursor:pointer; cursor:hand;width: 320px; height: 185px;" src="http://3.bp.blogspot.com/_aqCFnJBz0io/S9G_6JBPxEI/AAAAAAAAAHA/JK3VfXM3IZw/s320/irrigation.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5463358828551586882" /></a><br /><div align=center>スキーム別の灌漑面積の推移(縦軸:ha)<b></b> source: Kenya national water development report 2005, Ministry of Water and Irrigation</div><br /><br />私が今回見学させて頂いたのが当にそういうタイプの灌漑です。もともと、この地域では何軒かの農家が川から溝を掘り水を畑に引き込んで簡単な灌漑を行っていましたが、灌漑の効率が悪くごく限られた農家にしか水が行き渡っていませんでした。そこで、同じ水源でより広い地域で水を引き込めるような効率の良い灌漑の技術を紹介し、より多くの農家が安定的な農業生産をできるように、暮らしぶりがよくなるように促す、というのが私の知人が担当しているこの灌漑プロジェクトです。2005年に始まって今年の12月で支援は終わりますが、プロジェクト終了後に参加住民が自主的に灌漑維持管理また水路の拡張ができるように、これまでの活動の中で指導してきたようです。<br /><br />プロジェクトのインパクト評価はこれからだそうですが、現地の農民から話を伺ったところ灌漑の農業生産への効果はやはり大きいようです。水管理組合の組合長に話によると、灌漑が可能になったことで土地の値段がここ3−4年で約2倍(50,000-80,000sh/エーカー が 100,000-150,000sh/エーカー)になったそうです。プロジェクトが始まって、実際に灌漑用水が利用できるようになったのは最近ですが、地域農民が灌漑がもたらす生産へそして収入へのプラスの影響を認識しているのは間違いありません。<br /><br />プロジェクト終了後も、長期的に灌漑施設が運用され、また用水路が拡張されより多くの農民が継続的に利用出来るようになることを願います。追跡調査が可能なら、プロジェクト後の経過をフォローアップして、長期的なインパクトも評価して欲しいですね。誰もやらないようなら、私の将来の研究ネタとして密かに温めておきます。<br /><br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://1.bp.blogspot.com/_aqCFnJBz0io/S9FdyymmslI/AAAAAAAAAGo/3RgiIiV8vrE/s1600/Loitokitok.png"><img style="display:block; margin:0px auto 10px; text-align:center;cursor:pointer; cursor:hand;width: 268px; height: 320px;" src="http://1.bp.blogspot.com/_aqCFnJBz0io/S9FdyymmslI/AAAAAAAAAGo/3RgiIiV8vrE/s320/Loitokitok.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5463250950135657042" /></a><br /><br /><div align=center>調査旅行の軌跡</div><br /><br />*直接関係ありませんが、日本の治水に関する歴史が纏められているなかなか面白いサイトを見つけたので、紹介しておきます。<a href="http://suido-ishizue.jp/index.html">水土の礎</a>という(社)農業農村整備情報総合センターのサイトです。Tomboyahttp://www.blogger.com/profile/08243481617421050656noreply@blogger.com1tag:blogger.com,1999:blog-3161278018579234669.post-69785190268566680422010-04-15T22:33:00.008+09:002010-04-16T16:24:59.172+09:00タンザニア旅行今日は久々にナイロビオフィスで仕事です。3月半ばから、アメリカ・イギリス・日本へ出張、4月2日にナイロビに戻り翌々日からタンザニアへ家族旅行、ナイロビに戻った翌日ワークショップで研究発表とバタバタしてました。<br /><br />今回のタンザニア旅行は旅行業を営んでいる友人家族の企画で、その家族とわが家が自家用車で行って来ました。ほぼ全行程運転してきましたよ。走行距離約1500キロ、途中でスタック一度、パンク一度と我が家の車もラフロードに相当痛めつけれました。私は何度も車の故障で予定通り帰還できないのではと心配しましたが、旅を熟知した友人家族のサポートと車(日本の輸入中古車)の性能・耐久性のお陰で、サファリを満足行くまで堪能し、予定通りに帰還することが出来ました。<br /><br />今回の旅は自分で運転したので、充実感が違いますね。疲れたけど。デコボコ道の走行も日に日に慣れて上手くなって行くのが分かりました。<br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://4.bp.blogspot.com/_aqCFnJBz0io/S8cic1o3u0I/AAAAAAAAAGI/bBYvHTLYGpY/s1600/DSC_0847.JPG"><img style="display:block; margin:0px auto 10px; text-align:center;cursor:pointer; cursor:hand;width: 320px; height: 111px;" src="http://4.bp.blogspot.com/_aqCFnJBz0io/S8cic1o3u0I/AAAAAAAAAGI/bBYvHTLYGpY/s320/DSC_0847.JPG" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5460370952040201026" /></a><br /><br /><div align=center>ヌーの群れ(セレンゲッティ国立公園内)</div><br /><br />動物沢山見ました。ビッグ5(象・ライオン・豹・バッファロー・サイ)も制覇したしね。ンゴロンゴロ・クレーターの中でチーターも見ました。<br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://2.bp.blogspot.com/_aqCFnJBz0io/S8ciBFFwMGI/AAAAAAAAAGA/o9RjL9doesg/s1600/DSC_0603.jpg"><img style="display:block; margin:0px auto 10px; text-align:center;cursor:pointer; cursor:hand;width: 213px; height: 320px;" src="http://2.bp.blogspot.com/_aqCFnJBz0io/S8ciBFFwMGI/AAAAAAAAAGA/o9RjL9doesg/s320/DSC_0603.jpg" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5460370475151536226" /></a><br /><div align=center>岩(セレンゲッティ国立公園内)</div><br /><br />この岩は中が空洞になっていて石で叩くと良い音がします。小さな窪みが沢山ありますが、そのくぼみは石で何度も叩いた跡なんです。音色もくぼみ毎に微妙に違っています。マサイが儀礼で楽器として使っていたそうです。空がきれいでしょう。<br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://4.bp.blogspot.com/_aqCFnJBz0io/S8chqgOIy3I/AAAAAAAAAF4/K1dksgU4SM8/s1600/DSC_0258.JPG"><img style="display:block; margin:0px auto 10px; text-align:center;cursor:pointer; cursor:hand;width: 320px; height: 203px;" src="http://4.bp.blogspot.com/_aqCFnJBz0io/S8chqgOIy3I/AAAAAAAAAF4/K1dksgU4SM8/s320/DSC_0258.JPG" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5460370087297469298" /></a><br /><div align=center>Shifting Sands(ンゴロンゴロ国立公園内)</div><br /><br />上の写真Shifting Sandsと呼ばれる砂鉄からなる三日月型をした砂山で、草原の中に突如として現れます。強い風が吹いて砂がどんどん飛んでいるのに、砂山が維持されているのが不思議でした。近くのオルドバイ渓谷の学芸員(オルドバイ渓谷はアウストラロピテクス・アファレンシスの360万年前の足跡が見つかったところで小さな博物館がある)の話によると、Shifting Sandsは三日月型の砂山を維持しつつ少しづつ西へ移動しているそうです。<br /><br />今回の旅行中も何時もの調査旅行の時と同様にGarminのGPS機器を常備し、ほぼ全ての行程のgeocodeを記録してきたのですが、当然砂山の位置もマークして来ました(2° 56.703'S 35° 18.886'E)。その周辺のGoogle Earthの衛生写真を見ていて、Shifting Sandsに関して小発見がありました(興味のある方はGoogle Earthで確認して見てください)。写真を拡大すると、砂山は私たちが行ってマークした地点よりも約90メートルくらい東に位置していて、確かに砂山が西に移動していることがわかります。少し縮尺を引いて見ると、砂山が東から西へ移動してきた軌跡が地面に残っています。もっと引いてみると同じような跡が幾筋も確認出来ます。同じような砂山が過去に幾つもあったことが分かります。我々が訪れた砂山より3.5キロほど北上した位置にはもう一つの砂山があります。どの筋の西の端も先細りになっていて、砂山は東から西へ移動し、やがて消滅していく運命にあることが容易に予想できます。筋を東にたどっていくと、筋は段々と北東の方角へと伸びています。地形の影響でその様な風の流れができるのでしょう。画像の解像度が低い(緑がかった)部分にまで筋が見えますので、相当な距離を移動しているようです。<br /><br />今度行ったときにもう一度砂山の位置をマークするか、Googleの衛星写真が撮影された正確な時期がわかれば、移動速度がわかりますね。また、異なる時点での衛星写真でサイズの変化が分かれば、私たちが見た砂山がいつ消滅するか予測可能だと思います。<br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://4.bp.blogspot.com/_aqCFnJBz0io/S8cWJFDuGqI/AAAAAAAAAFw/1epG2cYsgz0/s1600/Track.png"><img style="display:block; margin:0px auto 10px; text-align:center;cursor:pointer; cursor:hand;width: 320px; height: 306px;" src="http://4.bp.blogspot.com/_aqCFnJBz0io/S8cWJFDuGqI/AAAAAAAAAFw/1epG2cYsgz0/s320/Track.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5460357418442431138" /></a><br /><br /><div align=center>今回の旅行の走行の軌跡</div><br /><br />楽しい旅行でした。<br /><br />追記:Shifting SandsのGoogle Earthの衛星写真の撮影日が分かりました。メイン・ウィンドウの左下角に出ているんですね。知らなかった。2005年1月16日です。Google Earthのルーラーを使って私がマークした位置と衛星写真の砂山の距離を計測すると、約90メートルあります。衛星写真がとられてから約5.25年経過しておりますので、砂山の移動速度は90/5.25で約17.1メートル/年となります。<br /><br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://3.bp.blogspot.com/_aqCFnJBz0io/S8gPTo4ykKI/AAAAAAAAAGQ/Iv8VJQOm3zQ/s1600/ShiftingSands.png"><img style="display:block; margin:0px auto 10px; text-align:center;cursor:pointer; cursor:hand;width: 320px; height: 246px;" src="http://3.bp.blogspot.com/_aqCFnJBz0io/S8gPTo4ykKI/AAAAAAAAAGQ/Iv8VJQOm3zQ/s320/ShiftingSands.png" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5460631378254270626" /></a><br /><div align=center>Shifting Sandsの衛星写真(Google Earth)</div>Tomboyahttp://www.blogger.com/profile/08243481617421050656noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3161278018579234669.post-23093448316447864782010-02-17T19:50:00.006+09:002010-04-26T22:38:27.047+09:00Boserupとアフリカ農業最近アフリカの異なる地域の農法の違いを見る機会が増えるにつけ、Boserup(1965)の中で、彼女が40年以上前に言った事は当たっているな、としみじみ思います。マルサス理論、つまり「食料供給と農業技術が人口のサイズを決定する」という言説に対して、彼女は、「人口のサイズが農業技術を決定する」と説きます。この説は、マルサス理論と対立する議論というより、所与の条件として考えていた農業技術を、人口圧力によって変化する(内生的に決定される)変数として捉えた拡張モデルと言えます。人口はマルサスの言うように幾何級数的に増えていますが、算術級数的にしか増えないと考えられた食料生産も、技術進歩のお陰で人口成長率以上のペースで増えています。<br /><br />速水佑次郎先生の「誘発技術革新(induced technology innovation)」の議論も、Boserupと同じライン上にあって、労働力が希少になってくると労働節約的な技術の、そして土地が希少になってくると土地節約的な技術の採用や開発が進むというものです。まさに「必要は発明の母」ってやつです。ただし、途上国の場合、「発明」しなくても、どこかですでに発明された技術を「採用」すれば良いというケースが、結構あったりします。そういうところでは「必要は採用の母」で、必要としている技術を紹介すると、一気に普及したりします。私が行っているウガンダのプロジェクトで、集約的農法のための農業インプット(肥料・高収量品種)を紹介したところ、そうしたインプットの採用が急に増えたのも、そうした技術が必要だったからでしょう。<br /> <br />潜在的な需要はあるんだけど、まだ知られていないために普及していないという技術・製品がアフリカでは数多くあるはずです。(だって、よそでは使われているけどここでは普及していないものって沢山あるでしょう。)また、多くのアフリカの国々で情報・交通インフラは確実に改善していますから、以前にも増してそういう技術・製品が増えているはずです。<br /><br />アフリカにはビジネス・チャンスがごろごろしているような気がします。なら、自分で商売すればと言われそうですね…。Tomboyahttp://www.blogger.com/profile/08243481617421050656noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3161278018579234669.post-9559148371332633602010-02-17T15:04:00.013+09:002010-02-18T19:06:10.459+09:00マトケ(バナナ)と化学肥料ウガンダのマトケ*の話が<a href="http://www.africanagricultureblog.com/2010/02/moderate-fertilizer-use-could-double.html">African Agricultureというblog</a>で紹介されていました。ウガンダではほとんどの農家がバナナ生産に化学肥料を使っていません。バナナの産地として有名なムバララの中心地はウガンダで3番目(たぶん?)の規模の街ですが、農業インプットの販売店に行っても化学肥料を売っていません(2008年9月、2010年1月ムバララ訪問時の聞き取り調査で確認)。<br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://2.bp.blogspot.com/_aqCFnJBz0io/S3vH8tcqmuI/AAAAAAAAAFY/o_JMp4PkfaI/s1600-h/banana_field.jpg"><img style="display:block; margin:0px auto 10px; text-align:center;cursor:pointer; cursor:hand;width: 320px; height: 211px;" src="http://2.bp.blogspot.com/_aqCFnJBz0io/S3vH8tcqmuI/AAAAAAAAAFY/o_JMp4PkfaI/s320/banana_field.jpg" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5439160820785912546" /></a><br /><p align="center">ムバララ近郊。写真中央の緑の濃いところがバナナ畑。</p><br /><br />今の所そういう状況なのですが、記事によると少量の化学肥料の施肥でバナナの収量が大幅に上がるとともに、果実が成熟するのに要する期間が短縮されるとのこと。内陸国のウガンダでは輸入に頼る化学肥料の値段が高く、肥料の収益率が他国より低いのは確かなのですが、それでも高い収益率が見込める地域があるとのこと。収益率を上げる方法として、記事の中では、窒素・リン酸・カリウムの成分が固定されている一般に流通しているパッケージ製品ではなく、土壌に不足している成分を中心に配合した肥料を使用することを上げています。農家が自分で効果的な肥料をブレンドするためには、土壌調査をしなければならないのですが、土壌調査のコストは大したことはないし、少し知識があれば自分でできます。<br /><br />前回のウガンダの調査の時に、調査対象家計の土壌の簡易調査も行ったのですが、その時に使用したマケレレ大学の土壌科学の教授が開発したという簡易テストキットは試薬と試験管等のセットで約90米ドルで60件分できるというものでした。添付の説明書通りにやればできるので、字が読めればできます。<br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://3.bp.blogspot.com/_aqCFnJBz0io/S3u501tS4sI/AAAAAAAAAFA/-9Q6u5KNF1Q/s1600-h/soilanalysiskit.jpg"><img style="display:block; margin:0px auto 10px; text-align:center;cursor:pointer; cursor:hand;width: 241px; height: 320px;" src="http://3.bp.blogspot.com/_aqCFnJBz0io/S3u501tS4sI/AAAAAAAAAFA/-9Q6u5KNF1Q/s320/soilanalysiskit.jpg" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5439145292401402562" /></a><br /><p align="center">手前のバッグが土壌テストのキット。</p><br /><br />農業普及委員が村単位で分析すれば、1件当たり土壌調査費用が1.5ドルですから、安いものです。ただし、ウガンダでも私の知る限り多くの地域で農業普及員の制度が上手く機能しておらず、農業普及委員制度が改善されなければ普及員を通じての分析の実施は難しいですね。農業普及員が役に立たなくても、うまくやれば民間でもペイすると思うんですがね。農業インプットの取扱店で、農家が持参した土壌サンプルを受付て有料で分析及び診断を行う、というのはどうでしょう。土壌調査をしてその結果をもとに作物に応じた土壌改良の処方箋を作るには、その調査データと希望の土壌成分とをつなぐマッピング情報が必要ですが、農学の知見の蓄積から借りてくれば、簡単なチャートを作るのも難しくないでしょう。そんな用途の<a href="http://www.smart-fertilizer.com/">PC用ソフトウェア</a>もあるようですし。次回のプロジェクトで、簡易テストの結果をもとに作った特製ブレンドの肥料がどのくらいインプット費用を削減し、収量を上げるのかやってみようかな。ぜんぜん経済学ではないですが…。<br /><br />土壌に足りない成分のみを施肥し肥料のコストを下げる他に、肥料の収益率を決めるもう一つの重要な要因は、バナナの生産者価格です。バナナは生鮮果物なので、輸送距離は商品の価値に大きく影響を与えます。いくら肥料が収穫量を増やすとしても、市場から遠い僻地では肥料の使用は、経済的に合理的な判断ではなくなってしまします。こういうところで頑張って普及活動をしても不毛です。ただ、道路が整備されたりすると状況が一変します。ウガンダは2011年の次期大統領選挙を控え現ムセベニ政権の元、道路整備を至る所でやっています。農民の市場へのアクセスは間違いなく改善するので、肥料の収益率が上がり、肥料の使用がペイする地域が拡大するのは間違いないでしょう。<br /><br />*マトケはウガンダの多くの地域の主食。青いバナナの皮をむき、芋煮の要領で煮、マッシュポテトの要領で潰して出来上がり、という簡単な料理です。因みにバナナ自体もマトケと呼ばれます。<br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://1.bp.blogspot.com/_aqCFnJBz0io/S3vNYfSW3ZI/AAAAAAAAAFg/_hPVHuAIsRM/s1600-h/matoke.jpg"><img style="display:block; margin:0px auto 10px; text-align:center;cursor:pointer; cursor:hand;width: 154px; height: 200px;" src="http://1.bp.blogspot.com/_aqCFnJBz0io/S3vNYfSW3ZI/AAAAAAAAAFg/_hPVHuAIsRM/s200/matoke.jpg" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5439166795579055506" /></a><br /><p align="center">バナナ。大きい一房で約4−5ドル。カンパラで買うと倍の値段。</p><br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://2.bp.blogspot.com/_aqCFnJBz0io/S3vNkBk8FoI/AAAAAAAAAFo/d8yaw3bs2tc/s1600-h/matoke_cooked.jpg"><img style="display:block; margin:0px auto 10px; text-align:center;cursor:pointer; cursor:hand;width: 200px; height: 150px;" src="http://2.bp.blogspot.com/_aqCFnJBz0io/S3vNkBk8FoI/AAAAAAAAAFo/d8yaw3bs2tc/s200/matoke_cooked.jpg" border="0" alt=""id="BLOGGER_PHOTO_ID_5439166993762358914" /></a><br /><p align="center">左の皿の黄色いペーストがマトケ。アシスタントの実家に寄ったときにご馳走になりました。</p>Tomboyahttp://www.blogger.com/profile/08243481617421050656noreply@blogger.com2tag:blogger.com,1999:blog-3161278018579234669.post-88541935065482632962010-01-06T17:10:00.007+09:002010-01-07T14:12:53.320+09:00Matatu Strike年明け早々、ナイロビ市民の足である乗合バス(matatu)の組合が、仕事初めの月曜日から「警察官のハラスメントをなんとかせいや」と抗議のストライキを始めました。街は混乱していたのですが、先日、オディンガ首相が出てきて「何とかするから」と、ストライキは収束に向うようです。<br /><br />ストのおかげでこの2、3日、普段マタトゥを利用している市民は歩いて仕事に通ってます。私は車で出勤しているのですが、朝夕車道の脇を歩いている市民を普段の数倍見かけます。昨日はいつも利用しているガスステーションで給油したら、夜勤明けの顔見知りの従業員が私の職場の近くまで乗せていって欲しいと頼んできました。彼の話だと皆4時起きで街まで3、4時間かけて歩いてるとのこと。<br /><br />安全のためということで2004年から交通法規が厳しくなり、乗合バスでもシートベルトの着用が義務づけられ、定員規制が厳しくなりました。また、去年の暮に騒音規制も厳しくなり、マタトゥの車掌の客引きのための口笛・大声やカーステレオのサウンドも規制の対象となり、<a href="http://allafrica.com/stories/200912280061.html">マタトゥドライバーが逮捕</a>されるということもありました。こうしたマタトゥ営業に関わる規制が強化されたことで、交通警官のマタトゥ運転手へのツッコミどころが多くなり賄賂の要求が以前よりも激しくなってきているようです。Daily Nationの記事によると、ナイロビ市内で営業しているマタトゥのオーナーの1日の利益は10,000sh (1USD=75.4sh、2009/1/6時点)で、その中から警官への賄賂や<a href="http://tom-matsumo.blogspot.com/2009/10/blog-post_22.html">ムンギキ</a>へのみかじめ料などの不法な支払いとして、1,000shくらい支出しているようです。<br /><br />ストライキ中にも少数ですが、マタトゥが客を乗せて走っているのを見かけました。マタトゥのオーナーからみかじめ料として徴収される資金はムンギキの活動資金に使われているし、ムンギキの構成員がマタトゥの運転手や車掌をやっていることもあるようです。このマタトゥ産業とムンギキの密接な関係を知ると、スト破りの制裁は怖くないのだろうか、と他人事ですが心配になってしまいました。<br /><br /><a href="http://www.nation.co.ke/News/-/1056/836752/-/item/1/-/5s1ms9z/-/index.html">昨日のDaily Nation</a>には、モンバサでスト破りのマタトゥを燃やした若者たちが捕まっている写真が載ってました。<br /><br /><a href="http://www.nation.co.ke/News/-/1056/836752/-/vorfbp/-/index.html">参照URL1</a>,<a href="http://allafrica.com/stories/200910141009.html">参照URL2</a>Tomboyahttp://www.blogger.com/profile/08243481617421050656noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3161278018579234669.post-62610517582783447072009-12-12T06:47:00.009+09:002010-02-18T15:47:49.085+09:00貯蓄制約とモバイルマネー「貯蓄制約(savings constraints)」という言葉はあまり聞き慣れませんが、<a href="http://www.econ.ucla.edu/pdupas/SavingsConstraints.pdf">Dupas and Robinson (2008)</a>のタイトルの一部で、フォーマルな金融サービスへのアクセスが悪く、安全に貯蓄する手段が無い状況を指しています。論文では、この貯蓄制約のせいで、途上国の人々は効率的に資産を構築できずに色々と不利益を被っているのではないか、そうだとすれば、安全に貯蓄する手段を与えてあげれば、色々と良いことがあるのではないかという期待のもと、流行りのフィールド実験を2006/07年にかけてケニアで行います。対象はブマラ(ウガンダの国境に近い小さな町)の小規模自営業者で、無作為に選んだ被験者の約半数に、村の銀行の貯蓄口座を利用できるオプションを与えます。<br /><br />この銀行の口座を開設するための費用は通常450Ksh(1USD=75.6Ksh 2009/12/08現在)で、金利は無く、引出し手数料がかかります。手数料は引出し額500Kshまで30sh、500shから1,000shまで50sh、1,000sh以上は100shとなっています。金利0%に加えこの手数料ですから、実質的に名目金利もマイナスです。インフレ率が高いので実質金利は当然マイナスです。(ちなみに、2007年の<a href="http://www19.wolframalpha.com/input/?i=inflation+rate+kenya">インフレ率は13%</a>。)それなら、タンス預金の方が良いではないかと思うかもしれませんが、家で現金を蓄えるというのも中々難しいんです。現金を手元に置いておくと盗まれるかもしれないし、ついつい誘惑に負けて使ってしまったり、夫にせびられたりかもしれない。また、拡張家族(extended family)内の助け合いは当然ですから、親戚の子の入学金が必要だとか、おばさんが病気だと言われれば金を貸さない訳にはいかないんです。手元にお金が無ければ、そういう個人資産形成を阻む要因をいくらか回避できるようなんです。<br /><br />フォーマルな金融サービスへのアクセスが限られているからといって、タンス預金以外の貯蓄の手段が無い訳ではありません。ケニアでは、メリーゴーラウンドというROSCA(Rotating Savings and Credit Association)が非常に一般的で、多くの人々が職場の同僚と、同業者と、あるいは近所の友人などとROSCAグループを作り資産形成やメンバー間のお金の貸借を行っています。取引費用を考慮すると、メリーゴーラウンドもやはりマイナス金利での貯蓄になるので、タンス預金より良い理由を学者があれこれと考察しています。<br /><br />例えば、<a href="http://www.journals.uchicago.edu/doi/full/10.1086/508716">Gugerty (2007)</a>はメリーゴーラウンドへの参加は貯蓄へコミットするための手段だ、と言っています。要するに手元にあると誘惑に負けて使っちゃうから、簡単には使えないようにROSCAに参加して半強制的に貯蓄するってこと。<a href="http://www.mitpressjournals.org/doi/abs/10.1162/003355302760193931">Anderson and Baland (2002)</a>は、キベラ地区(ナイロビの最大のスラム)で、既婚女性のメリーゴーラウンドの参加率が高いことに着目し、特に女性が配偶者から資産を守るツールとしてのROSCAの機能にフォーカスしています。<br /><br />これなら、フォーマルな金融サービスへのアクセスが無くてもさして困らなそうですが、メリーゴーラウンドではお金の引き出しのタイミングの融通が効かないというデメリットがあります。典型的なメリーゴーラウンドでは一月に一回程度開かれる会合で10-15人程のメンバーが一定額を拠出し、プールしたお金をメンバーの一人が順番でもらいます。自分の順番がどのくらいの頻度で回ってくるかは、会合の頻度とメンバーの数で決まってきますが、典型的なものでは半年から1年半に一度です。誰が次にもらうかは事前に順番が固定されているので、お金が入用なとき自由に引き出せるというものではないのです。(ただし、私の友人などからの情報では、プール金をもらう順番を譲りあったり、金銭で取引したりと割と弾力的な運用をしているケースも多いとのことです。)あとデメリットが他にあるとすれば、ROSCAは定期的に会合に参加するのが必須ですから、機会費用が高い個人は定期的な会合に出るのが負担になるかもしれません。(多くの人は月に一度の友人との楽しい会合と喜んで参加しているようですが。)<br /><br />ちょっと話がそれましたが、<a href="http://www.econ.ucla.edu/pdupas/SavingsConstraints.pdf">Dupas and Robinson </a>が行った実験では、口座開設のための費用はプロジェクトで肩代わりし、治験群の被験者は無料で口座を開設できるようにしています。この口座開設から18ヶ月間の治験群、対照群の両被験者の行動を観察し、口座開設の効果を分析しています。分析結果は、治験群の中で実際に口座を開設し、運用した割合は女性の方が高く、彼女たちのビジネスへの投資は統計的に有意に増加したそうです。消費財の支出も増えており、所得への正の効果を示しています。また、銀行口座への貯蓄が増えても、他のインフォーマルな貯蓄(ROSCA)をクラウディングアウトしたという証拠もない、というものでした。<br /><br />サンプル数が少なく、統計的にちょいと曖昧な部分もあるのですが、もしこの結果が本当でかつ他の地域への一般化も可能だとすれば、現時点ですでに田舎でもかなり普及しているモバイルマネー(<a href="http://en.wikipedia.org/wiki/M-Pesa">Safaricomのm-pesa</a>など)の家計への影響は相当あるはずです。M-pesaは2007年3月にモバイル・ネットワーク・プロバイダーであるSafaricomが提供を始めたサービスで、預金、送金の手段として、その取引手数料の安さと携帯電話での簡単な操作で取引可能な利便性の高さから、人気がすごいんです。なんせ、普及のスピードがすごい。下のグラフ、青いラインがm-pesaの利用者、赤いラインがm-pesaの取扱い店舗数です。<br /><br /><a onblur="try {parent.deselectBloggerImageGracefully();} catch(e) {}" href="http://1.bp.blogspot.com/_aqCFnJBz0io/SyYdB0_d8dI/AAAAAAAAAE4/j6uuxLKEPsc/s1600-h/m-pesa.png"><img style="margin: 0px auto 10px; display: block; text-align: center; cursor: pointer; width: 400px; height: 245px;" src="http://1.bp.blogspot.com/_aqCFnJBz0io/SyYdB0_d8dI/AAAAAAAAAE4/j6uuxLKEPsc/s400/m-pesa.png" alt="" id="BLOGGER_PHOTO_ID_5415047519201522130" border="0" /></a><br /><div style="text-align: center;"><a href="http://www.google.com/url?sa=t&source=web&ct=res&cd=4&ved=0CBkQFjAD&url=http%3A%2F%2Fwww.safaricom.co.ke%2Ffileadmin%2Ftemplate%2Fmain%2Fimages%2FMiscUploads%2FM-PESA%2520Statistics.pdf&ei=lwkmS9SoJ4H8tQOJ573gDg&usg=AFQjCNHIagZSIot4tRE6rzEuGKbxuthIfg&sig2=XsT2Fnbz6qYWISLg80h1KA">データの出所</a><br /></div><br /><a href="http://www.google.co.jp/url?sa=t&source=web&ct=res&cd=4&ved=0CBcQFjAD&url=http%3A%2F%2Fwww.safaricom.co.ke%2Ffileadmin%2Ftemplate%2Fmain%2Fdownloads%2FMpesa_forms%2F14th%2520Tariff%2520Poster%2520new.pdf&ei=NxAmS4y_FIGgsgPLjbzgDg&usg=AFQjCNHYqJiqhWBTd40E17nocxXFr2pAUg&sig2=ZN2YDFs118-EfAqjktzGlQ">m-pesaの取引手数料</a>は実験で使われた貯蓄口座のものよりずっと安いし、Safaricomのシムカードを持っていたら、20KshでM-pesaアカウントを開設できるんです。治験群に与えられた「村の銀行で貯蓄口座を開設できるオプション」よりずっとましなサービスですから、そのビジネスへの効果、所得への効果は大きいはず。また、他者の目に容易に見えない形で個人の資産形成が低コストで可能になるということですから、長期的には色々な方面に影響が出そう。拡張家族間の互恵的な助け合いという文化にも影響がでるだろうし、家族内での資産・資源配分の変化による夫婦間の力関係にも影響しそう。<br /><br />十年後には、ケニアでも核家族化が進み、女性の地位が向上してるかも?少子化も来るか?<br /><br />追記:この間 mpesaアカウントを開設しました。登録料は無料でした。Feb 18, 2010Tomboyahttp://www.blogger.com/profile/08243481617421050656noreply@blogger.com3tag:blogger.com,1999:blog-3161278018579234669.post-47701714092417028512009-12-01T00:25:00.004+09:002009-12-01T15:41:27.685+09:00宇宙時間における高度文明船便で送ってもらった荷物を最近受け取ったのですが、文芸春秋8月号が入っていました。その中で、石原慎太郎氏がアメリカ的な物質文明の破綻を説くのに、ホーキング博士来日講演(20年くらい前)での博士と観衆とのやりとりに言及しているのですが(p135)、古い話で恐縮ですが、ちょっと面白かったのでやり取りの部分だけ抜粋します。<br /><blockquote>「この宇宙に地球ほどの文明をもった星がいくつぐらいあるのでしょうか」<br />「二百万ぐらいあるでしょうか」<br />「その中には地球より進んだ文明をもつ星も当然あるはずなのに、我々が実際に宇宙人や宇宙船を目にすることがないのはなぜか」<br />「地球ぐらいの文明をもつと自然の循環が狂って来て、加速度的に不安定になる。そういう惑星は、宇宙時間では瞬間的に滅びてしまうからだ」<br /><br /></blockquote>安易に危機感を煽動する終末説には全く与しませんが、「宇宙時間」で考えたらそりゃ瞬間的に滅びるわな、と妙に納得してしまいました。宇宙物理学なんかやっていて「宇宙時間」というスケールで考えていたら当然の結末なのでしょう。<br /><br />人口はどんどん増えてるし、一人当たりの消費量も増えてるのに、地球の資源は限られている。10年とは言わないが100年経ったら人類は滅んでるかもしれない、と素朴に思う人は多いと思います。が、Paul Romer は<blockquote><span style="font-family:Arial,Helvetica;">Human beings possess a nearly infinite capacity to reconfigure physical objects by creating new recipes for their use.<br /><br /></span></blockquote>と言っています。経済学者は楽観的な人が多いのでしょうか。私の好きな経済史家のEsterlineも何十年も前、マルサス的な終末説が騒がれたときに、「人口爆発」なんて起きないって言ってたし。これは今んとこあたってるかな。タイで少子化対策を考えてるそうだからね。<br /><br />あーあ、「宇宙時間」で考えると自分の仕事のなんとみみっちいことか。くだらない考えはよして、論文書こう。Tomboyahttp://www.blogger.com/profile/08243481617421050656noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3161278018579234669.post-3291554633448794352009-11-26T16:10:00.004+09:002009-12-01T19:26:01.681+09:00Latexでbloggerに数式<img src="http://www.codecogs.com/gif.latex?%5Cphi%28x%29%20=%20%5Cfrac%7B1%7D%7B%5Csqrt%7B2%5Cpi%20%5Csigma%5E2%7D%7D%20e%5E%7B-%5Cfrac%7B%28x-%5Cmu%29%5E2%7D%7B2%5Csigma%5E2%7D%7D" align="middle" border="0" /><br /><img src="http://www.codecogs.com/gif.latex?%5CPhi%28a%29=%5Cint_%7B-%5Cinfty%7D%5E%7Ba%7D%20%5Cphi%28x%29dx" align="middle" border="0" /><br /><br /><a href="http://www.kuribo.info/2007/06/blogger-latex-greasemonkey.html">参照URL1</a>, <a href="http://www.kuribo.info/2009/05/blogger-latex-latex-for-blogger.html">URL2</a>Tomboyahttp://www.blogger.com/profile/08243481617421050656noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3161278018579234669.post-77738747004430056242009-11-03T15:48:00.008+09:002009-11-19T14:55:21.840+09:00最低賃金たまたま、経済学者のblogをチェックしてたら、一橋大学で<a href="http://gcoe.ier.hit-u.ac.jp/information/schedule/conference/combating_poverty.html">「貧困にどう立ち向かうか-一橋エコノミストの提言-」</a>というシンポジウムが12月2日開かれることを知りました。ざっとプログラムを見ると、川口大司さんの「最低賃金の貧困対策としての有効性」という実証研究が目に留りました。経済学者の間では、最低賃金の導入は、労働市場が競争的な場合、雇用を減らす、特に、設定される最低賃金以下で働いている、救済を最も必要とする人々の雇用を奪う、と不評な政策です。<br /><br />しかし、実証的には最低賃金政策の雇用への効果は自明ではありません。最低賃金と雇用の微妙な関係に関しては、有名な論争があります。<a href="http://www.jstor.org/stable/info/2118030">Card and Kruger(1994)</a>が論争の種なのですが、そこではニュージャージー州の最低賃金の引き上げが雇用を減らすという仮説を統計的に棄却し、逆に雇用を増やすという意外な実証結果を報告しています。その論文では、電話アンケートという形でニュージャージー州とお隣のペンシルベニア州のハンバーガーショップの賃金と雇用のデータを、最低賃金政策が施行される前と後の時期のデータを集め、その期間の雇用の変化を州の間で比較しています。いわゆる計量経済学で言う所の「差の差(Difference in Difference)」の検定です。その比較から前述の意外な効果の「統計的に有意」な結果を導き出しました。<br /><br />それに対し<a href="http://www.jstor.org/stable/info/2677855">Neumark and Wascher(2000)</a>は、同地域のハンバーガーショップの賃金台帳(payroll record)を元に再検証すると、最低賃金政策の雇用への負の「統計的に有意」な効果が得られる、とCard and Krugerの結論に反証を突きつけます。<a href="http://www.jstor.org/stable/info/2677856">Card and Kruger(2000)</a>では再反論が展開され、Neumark and Wascherでは雇用の計測の仕方が違う(悪い)から違う結果が出ている、そこを修正したら賃金台帳のデータを使っても、「ニュージャージー州の最低賃金の引き上げが雇用を減らした」という仮説はやっぱり統計的に棄却される、と主張します。(ただし、雇用への正の効果の主張は取り下げて、少しトーンダウンしています。)という具合に微妙なんです。ランダム化実験が流行るのもわかるでしょ。実際に観察されるデータを用いた分析だと、データの取り扱い、分析のメソッドで結果が変わってきてしまうことが良くあるんです。この欲求不満が、今の開発経済でのフィールド実験の流行に繋がっています。<br /><br />で、ふと「ケニアに最低賃金ってあるのだろうか」と思ってググってみると、ありました。ケニアでは最低賃金法の実効力はほとんどない思われますが、少なくとも形式的には存在しているんですね。Daily Nationの今年の5月1日(メーデー)の<a href="http://www.nation.co.ke/News/-/1056/592846/-/item/0/-/ntejkaz/-/index.html">記事</a>で紹介されていました。労働大臣がケニアの最低賃金をあげるとメーデーのイベントで宣言して、大衆から喝采を受けたようです。ちなみに、最低賃金(月額)は農業で3,043シリング(約40米ドル)、ナイロビ・モンバサ・キスム(ケニアの主要都市)の一般の職種で6,130シリング(約81米ドル)だそうです。<br /><br />7月にリフトバレーとニヤンザへ調査に言った時の聞き取りだと、農村での賃労働は草取り半日(朝から昼まで、約4−5時間)でだいたい70−100シリングでした。多くは最低賃金以下で働いています。さて、もし仮に、ここに実効力のある最低賃金が導入されたらどうなるでしょう?Tomboyahttp://www.blogger.com/profile/08243481617421050656noreply@blogger.com3tag:blogger.com,1999:blog-3161278018579234669.post-75603452948102879092009-10-22T14:54:00.006+09:002009-10-22T18:39:47.761+09:00男女間教育格差の縮小とムンギキ(ヤクザ)の関係昨日の<a href="http://www.nation.co.ke/">Daily Nation</a>によると、先日から高校(Secondary School)の卒業試験(Kenya Certificate of Secondary Education Exam)が始まったのですが、セントラル県では、女子の受験者数が男子のそれよりも多かったそうです。男女間の格差は年々縮まってはいましたが、受験者数で女子が男子を超えるのは初めてのことだそうです。記事では「このトレンドはジェンダー活動家の勝利」と続きますが、更にオチがつきます。教育関係の役人によれば、この傾向はムンギキ*と児童労働と酒とドラッグによるところも多いとのこと。つまり、男子の方が中退してムンギキに入ってしまったり、酒や薬に溺れて中退してしまったりするケースが多いようです。セントラル県の地域別の統計によると、ムンギキの拠点と言われている、ニエリ(Nyeri)とムランガ(Murang'a)で特に男子の受験者数が女子に比べ少ないようです。ジェンダー活動家も素直に喜べないかな?<br /><br />*ムンギキは独立闘争の時にセントラル県で生まれたキクユ族の集団で、暴力で植民地政府に対抗した。独立後、犯罪者集団となり、社会問題となっている。Tomboyahttp://www.blogger.com/profile/08243481617421050656noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3161278018579234669.post-92151088904077737012009-10-21T19:44:00.006+09:002010-01-06T18:37:16.044+09:00HIVワクチンの有効性BBCのサイトに<a href="http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/8315002.stm">HIVワクチンについての記事</a>が出ていました。記事によるとタイで行われた18歳から30歳の16000人の異性愛者を対象としたランダム化比較試験(RCT)で、混合ワクチンの接種で感染リスクが31%低下するとの結果が得られたそうです。対照群の8000人(偽薬を処方された人)のうち74人が3年後の追跡調査で感染が確認され、一方、治験群では、8000人(ワクチンを処方された人)のうち51人が感染していたそうです。「感染リスクの31%の低下」とは何を意味するのか、語句を読んだだけでは分らなかったのですが、文中の数字を拾って確認できました。「感染リスクX%の低下」とは X=(対照群の感染者数-治験群の感染者数)/対照群の感染者数*100、と定義されるようです。(因に31%=(74-51)/74です。)つまり、「ワクチンを接種しなかった感染者に対して、接種していたら感染しなかっただろうと予測される感染者の割合」と解釈できそうです。<br /><br />これほど大規模なRCTでのHIVワクチンの有効性の検証は初めてだったようで、しかも「統計的に有意な効果」が得られていますから、この研究成果は色々なメディアに取り上げられているようです。ただし、なぜ感染リスクが低下したのかという肝心のメカニズムが分っていないようなので、評価は微妙です。<br /><br />また専門家の間では、統計的な処理に疑問の声が上がっているようです。何せ、対照群と治験群の感染者の数が、それぞれ8000人中の74人と51人ですから、微妙ですよね。簡単な計算で確かめられますが、確かに、このデータをもとに対照群と治験群の平均の差の検定(t検定)をやってみると、p値が0.039ですので、有意水準5%で「グループ間で平均が等しい」という帰無仮説を棄却します。でも、もし仮に治験群の感染者数が2人増えて53人になったら、p値は0.061になり、「統計的に有意ではない」結果になってしまいます。同様に、感染者が対照群で2人減っても同様な結果(p値=0.057)が得られます。感染者の1人、2人の違いで結果の統計的な有意性が変わってしまうので、希事象(rare event)を扱っている統計学者はデータの処理に特に慎重でなければなりません。この研究でも、治験群の被験者から計画通りのワクチンを接種を一度でもミスした者を除くと、グループ間の感染率平均の差が統計的に有意で無くなってしまうそうです。<br /><br />これを書いていたら、色々と興味が湧いて来てしまいました。元論文を読んでみた方が良いですね。読んだら報告します。Tomboyahttp://www.blogger.com/profile/08243481617421050656noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3161278018579234669.post-16456837065819356262009-10-15T22:10:00.006+09:002009-10-16T00:52:53.027+09:00感想:おいしいコーヒーの経済論辻村英之氏の<a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/477831171X?ie=UTF8&tag=booklog.jp-22&linkCode=xm2">おいしいコーヒーの経済論</a>を読みました。著者はタンザニアの農村で長く調査されている研究者で、調査地の主要換金作物であるコーヒーの生産・流通プロセスを通じて垣間見えるアフリカ農村の農業・貧困問題を扱った一般向け書物を何冊か書かれています。この本でもタンザニアでの経験・観察を出発点とし、コーヒーの価格変動に対してあまりにも脆弱な小規模農家、農村の現状を紹介し、コーヒー生産・流通・消費のプロセスを詳しく見ることで浮かび上がるコーヒーの価格形成の不公正さを訴え、最後に、不公正是正のためにその取り組みが始まったフェアトレードの意義とその可能性を紹介しています。<br /><br />私もアフリカの農村の研究に携わっているのですが、甚だ無知なので非常に勉強になりました。ただ、著者の意見と異なる点も幾つかありました。一つだけ上げるとすると、フェアトレードに対するアフリカの農業・貧困問題を解決する手段としての期待感の違いですね。著者は多いに期待しているようですが、私は慎重派です。勿論、今後成功事例が増え効果が実証されれば、慎重派を撤回しますが、今のところ目立った成功は出ていないし(知らないだけかもしれませんが)、問題点も多いのではないでしょうか。<br /><br />まず、問題として考えられるのはフェアトレードが価格のゆがみ(Price Distortion)を生んでしまうことです。<a href="http://timharford.com/">Tim Harford</a>なんかはフェアトレードに露骨に反対しています。コーヒー価格の下落はそもそも世界的な供給超過で起きたんだから、もうこれ以上コーヒーはいらない。フェアトレードで市場価格にプレミアムを上乗せしたら、更に供給が増えてしまう。すると市場価格が下落して、フェアトレードに参加できない多くの零細農家が被害を被るのではないか、と言っています。また、零細農家支援の目的で行われるフェアトレードですが、その支援としての効率性も低いようです。Economist(12/07/2006)の記事によると市場価格に上乗せされるフェアトレードプレミアムのうち生産者に渡るのは僅か10%だそうです。<br /><br />経済学者の中ではフェアトレードに賛成なのは少数派なのではないでしょうか。勿論少数派の意見が間違っているということではありません。ただ、フェアトレードの現状を良く知る著者にはこの辺にも言及して頂きたかったです。Tomboyahttp://www.blogger.com/profile/08243481617421050656noreply@blogger.com0