以前のエントリでも紹介しましたが、ケニアではモバイル・マネー(m-pesa)の急速な普及で、距離を隔てた個人間の金銭の受け渡しがここ2、3年で革命的に容易になりました。送金に掛かる手数料も少ないので、小額のやり取りにも使われます。これからは、今まで取引費用が高すぎて現実的では無かった小規模農家を対象にしたマイクロ信用・マイクロ保険などの金融サービスが色々出てくるのは間違いないでしょう。mpesaで貸してmpesaで返済してもらう、というのは技術的にすでに可能ですから、如何に低い費用で返済率の高いシステムが構築できるかで、マイクロ金融が今後発展するか否かが決まってきます。もし、小規模農家を対象とした低利のマイクロ金融が展開したら、信用制約の問題も緩和されアフリカ農村が変わるかもしれません。モバイル技術の発展でその期待はどんどん膨らんでいます。
そんな経緯で最近、どうしたらマイクロ金融の返済率が高まるかを調べています。「お金を貸すときに借りる人から指紋を取ると返済率が上がる」というのが今日読んだ Gine, Goldberg, Yang(2009)の実証的なファインディング。ちなみにGine and Yang (2008, JDE) は hkono氏のブログでも紹介されています。著者らはアフリカのマイクロ金融に関する研究課題をフィールド実験を使って実証した論文を幾つか書いていて、今回の論文もその一つです。
今回のフィールド実験はマラウィで試験的に行われた契約農業プロジェクト*の対象農家に対して行われたもので、農業インプットの掛売の集金を効率的に行う方法を検証しています。まず、1グループ15人から20人で構成されている契約農家を、グループ単位で無作為に治験群と対照群にわけます。対象農家はプロジェクトからパプリカ生産のための農業インプット(肥料・種・農薬等)0.5から1エーカー分を掛買いできますが、シーズン終了後に利息分と合わせて返済する必要があります。もし返済しなかった場合、今後掛買いの機会を失いますが、きちんと返済した場合、より高額の借入が可能になります。借入・返済のルールがいわゆる動学的インセンティブシステムに成っています。こうした共通のシステムの下、治験群の農家には借入時に、電子的に指紋のスキャン画像を取ることを要求し、対照群の農家には要求しない、という差別化をします。そして、シーズンの収穫時期後に集金を行い、2つのグループ間で返済率がどの程度違うかを計測し、指紋押捺の借金回収の効果を検証しています。更に、貸し倒れリスクの高いタイプの農家とそうでないタイプの農家で、指紋押捺の効果に差があるかどうかも検証しています。
結論は、貸し倒れリスクの高いタイプの農家の返済率への影響は大きく、統計的に有意な効果があるが、そうでないタイプの農家は小さく有意な効果はない、というものでした。この結果は、指紋押捺することで、個人認証がより正確にできるようになるため、特に貸し倒れリスクの高い農家にとって、動学的インセンティブシステムがより機能するようになる、つまり、契約不履行の場合の将来の借り入れ機会喪失という脅しが、空脅しではなく確かな脅しとして機能するようになり返済率が高まる、と解釈できます。
*パプリカ(香辛料の原料)の輸入・加工・販売を行っているオランダの企業Cheetah Paprika Limited(CP)が、政府系金融機関のマラウィ地域金融法人(Malawi Rural Finance Corporation (MRFC))と共同で2007年に行ったプロジェクト。
2010/05/11
2010/05/05
Kilimo Salama(安全な農業)
エントリのタイトルの”Kilimo Salama”というのはスワヒリ語で「安全な農業」という意味ですが、UAPとSyngenta Fundationが肥料輸入販売会社のMEA、モバイル・ネットワーク・プロバイダーのSafaricom、ケニア気象局、NGOのCNFA/AGMARKの協力の下、試験的に販売を始めたメイズ・小麦農家を対象とする穀物保険のことです。最近幾つかのメディアで取り上げられていて(Daily Nation 2010/03/10, Economist 2010/03/11)ずっと気になっていました。
そこで、先日その保険を販売しているUAP保険本社(在ナイロビ)を訪問し、穀物保険のプロジェクトの担当者に会って穀物保険について話を伺ってきました。
この保険商品の特徴はi)天候インデックス保険であること、ii)モバイル技術を使用し、携帯のSMS通信で保険契約を取り交わすこと、iii)保険金がモバイル・マネー(m-pesa)で支払われることにあります。以前のエントリでも紹介しましたが、ケニアではネットワーク・プロバイダーであるSafaricomのモバイル・マネー"m-pesa"がこの2、3年で急速に普及し、農村でも浸透し、m-pesaを利用した金融サービスが農村でも技術的には利用可能な状況にあるのです。
「天候インデックス」というのは雨量、日照時間、湿度というような天候に関する公に観察可能な客観的な指標です。この天候インデックスに保険金支払いの基準を関連付けた保険商品が、天候インデックス保険です(hkono氏のblogにインデックス保険について詳しい説明あり)。従来の保険だと保険業者が保険加入者の損害の程度を調査して、その結果を予め決められた保険金支払の基準と照らし合わせて、保険金支払額が決まります。一方、インデックス保険の場合、個別の損害調査は必要なく、天候観測所のデータを定期的に収集しさえすれば、保険金支払額を決定するための情報が集まります。
”Kilimo Salama”は天候インデックス保険であることに加え、携帯電話で保険契約・支払に掛かる取引が完了するものなので、保険金支払いのための被害の個別調査は必要ありません。また、掛金の回収・保険金の支払いのために保険業者の担当者がわざわざ保険加入者を訪問する必要もありません。そのため保険契約に掛かる取引費用が激減しました。そのお陰で、小規模農家を対象とする掛金のとても小さな商品でも民間のサービスとして提供可能になったのです。
この保険商品は、農業インプットとの抱合せという形で販売されていて、農業インプットの販売店で、肥料・種子・薬品を購入するときに、加入できます。掛金はインプットのコストの10%なのですが、その内の5%は農業インプットの販売会社が支払うことになっているので、実際農民が支払う掛金はインプットコストの5%です。保険はインプットのコストをカバーしていて、旱魃や大雨などで天候インデックスがある基準範囲から乖離した場合、農民の購入したインプットの代金がm-pesaを通じて払戻される仕組みになっています。
この商品の普及の一つのカギは、他の保険商品と同様、掛金を抑えつつ如何に損失リスクを軽減させるか、にあります。そうするためには、天候インデックス穀物保険の場合、穀物の単収と強い相関もった天候インデックスを採用する必要があります。これは、極端なケースを考えると分かりやすい論理です。例えば、天候インデックスが収量と無相関の場合、その保険商品はギャンブルと同じで、天候による損失リスクを軽減しませんから、リスクを嫌う農民は加入しません。逆に完全に相関している場合、損失リスクが確実に軽減しますから、同じ掛金・保険支払のもとでより多くの農民が加入します。
"Kilimo Salama"では、降水量を天候インデックスとして採用していますが、色々と問題点もあるようです。まず、雨量の観測点から離れるにつれ、雨量のレベルが違ってくる。地形によっては、少しの距離の違いでも、雨量が大きく異なることがあるようです。この場合観測点のそばでは、天候インデックスと単収の相関が高いのに、離れるにつれて相関が大きく低下するという問題が発生します。この問題を緩和するために、試験販売の対象地域に一機約4,000USDの観測機械を30台設置したそうです。この観測機械は、天候情報を収集し15分毎にモバイル・ネットワークを通じてデータセンターに自動送信するようになっています。
もう一つの問題は、保険会社が掛金・保険金支払額・支払い基準などの契約内容を策定するにあたり、対象地域の多くの地点で過去の雨量・収穫量の正確なデータが必要なのですが、そうしたデータが中々ないことです。そうしたデータは損害予測をするのにとても重要です。正確なデータがないと損害予測の誤差が大きくなり、保険商品の契約内容の策定が難しくなります。例えば、掛金が高くなりすぎたり、保険金支払い額が少なすぎたり、支払い基準が厳しすぎたりすると、農民にとって魅力的な商品ではなくなります。また、そうした内容を甘くしすぎると、保険会社の損失が大きくなり、持続可能なサービスではなくなります。"Kilimo Salama"はまだ試験的な販売なので、こうした点に関しては試行錯誤の段階のようです。
農業インプットの改良で旱魃に強い品種などが開発されており、極端な旱魃などにならない限り、在来種よりも収量が多く、更にその変動も少ない改良種などもあります。極端な天候の場合の損失リスクが軽減するような保険商品は、改良種などの技術普及へ大きなインパクトを与えるものと思われます。今後の展開を見守っていきたいと思います。追加情報があれば、また報告します。
そこで、先日その保険を販売しているUAP保険本社(在ナイロビ)を訪問し、穀物保険のプロジェクトの担当者に会って穀物保険について話を伺ってきました。
この保険商品の特徴はi)天候インデックス保険であること、ii)モバイル技術を使用し、携帯のSMS通信で保険契約を取り交わすこと、iii)保険金がモバイル・マネー(m-pesa)で支払われることにあります。以前のエントリでも紹介しましたが、ケニアではネットワーク・プロバイダーであるSafaricomのモバイル・マネー"m-pesa"がこの2、3年で急速に普及し、農村でも浸透し、m-pesaを利用した金融サービスが農村でも技術的には利用可能な状況にあるのです。
「天候インデックス」というのは雨量、日照時間、湿度というような天候に関する公に観察可能な客観的な指標です。この天候インデックスに保険金支払いの基準を関連付けた保険商品が、天候インデックス保険です(hkono氏のblogにインデックス保険について詳しい説明あり)。従来の保険だと保険業者が保険加入者の損害の程度を調査して、その結果を予め決められた保険金支払の基準と照らし合わせて、保険金支払額が決まります。一方、インデックス保険の場合、個別の損害調査は必要なく、天候観測所のデータを定期的に収集しさえすれば、保険金支払額を決定するための情報が集まります。
”Kilimo Salama”は天候インデックス保険であることに加え、携帯電話で保険契約・支払に掛かる取引が完了するものなので、保険金支払いのための被害の個別調査は必要ありません。また、掛金の回収・保険金の支払いのために保険業者の担当者がわざわざ保険加入者を訪問する必要もありません。そのため保険契約に掛かる取引費用が激減しました。そのお陰で、小規模農家を対象とする掛金のとても小さな商品でも民間のサービスとして提供可能になったのです。
この保険商品は、農業インプットとの抱合せという形で販売されていて、農業インプットの販売店で、肥料・種子・薬品を購入するときに、加入できます。掛金はインプットのコストの10%なのですが、その内の5%は農業インプットの販売会社が支払うことになっているので、実際農民が支払う掛金はインプットコストの5%です。保険はインプットのコストをカバーしていて、旱魃や大雨などで天候インデックスがある基準範囲から乖離した場合、農民の購入したインプットの代金がm-pesaを通じて払戻される仕組みになっています。
この商品の普及の一つのカギは、他の保険商品と同様、掛金を抑えつつ如何に損失リスクを軽減させるか、にあります。そうするためには、天候インデックス穀物保険の場合、穀物の単収と強い相関もった天候インデックスを採用する必要があります。これは、極端なケースを考えると分かりやすい論理です。例えば、天候インデックスが収量と無相関の場合、その保険商品はギャンブルと同じで、天候による損失リスクを軽減しませんから、リスクを嫌う農民は加入しません。逆に完全に相関している場合、損失リスクが確実に軽減しますから、同じ掛金・保険支払のもとでより多くの農民が加入します。
"Kilimo Salama"では、降水量を天候インデックスとして採用していますが、色々と問題点もあるようです。まず、雨量の観測点から離れるにつれ、雨量のレベルが違ってくる。地形によっては、少しの距離の違いでも、雨量が大きく異なることがあるようです。この場合観測点のそばでは、天候インデックスと単収の相関が高いのに、離れるにつれて相関が大きく低下するという問題が発生します。この問題を緩和するために、試験販売の対象地域に一機約4,000USDの観測機械を30台設置したそうです。この観測機械は、天候情報を収集し15分毎にモバイル・ネットワークを通じてデータセンターに自動送信するようになっています。
もう一つの問題は、保険会社が掛金・保険金支払額・支払い基準などの契約内容を策定するにあたり、対象地域の多くの地点で過去の雨量・収穫量の正確なデータが必要なのですが、そうしたデータが中々ないことです。そうしたデータは損害予測をするのにとても重要です。正確なデータがないと損害予測の誤差が大きくなり、保険商品の契約内容の策定が難しくなります。例えば、掛金が高くなりすぎたり、保険金支払い額が少なすぎたり、支払い基準が厳しすぎたりすると、農民にとって魅力的な商品ではなくなります。また、そうした内容を甘くしすぎると、保険会社の損失が大きくなり、持続可能なサービスではなくなります。"Kilimo Salama"はまだ試験的な販売なので、こうした点に関しては試行錯誤の段階のようです。
農業インプットの改良で旱魃に強い品種などが開発されており、極端な旱魃などにならない限り、在来種よりも収量が多く、更にその変動も少ない改良種などもあります。極端な天候の場合の損失リスクが軽減するような保険商品は、改良種などの技術普及へ大きなインパクトを与えるものと思われます。今後の展開を見守っていきたいと思います。追加情報があれば、また報告します。
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2010/04/23
キリマンジャロと小規模灌漑
知合いが実施しているキリマンジャロの麓の小規模灌漑プロジェクトを見学に行きました。

農業省の一つの部署だった灌漑・排水課(branch)が、2003年の省庁再編で水灌漑省の灌漑・排水局(department)に格上げされたことが示唆するように、ケニア政府は安定的な食料生産、農業生産性の増大、そして農民の生活改善の手段として、灌漑に以前にも増して着目しています。というのも、ケニアは国土の約80%が乾燥・半乾燥地域に分類される乾いた国ですから、天水に頼って安定的に農作物を生産できる地域が、限定されています。天水農業が可能なところは一般に人口密度が高く、そのために一戸あたりの作付面積が小さいので、少ない土地でできるだけ収穫量を増やすような技術(化学・有機肥料、高収量品種など)は、20年以上前からすでに取り入れられています。そうした地域で今後生産性を飛躍的に高めることは難しいでしょう。乾いた地域が多く、天水で農業が出来るところも、もうその潜在力をかなり使いきっている、という状況ですから、農業生産を増大させるためにできることは限られています。数少ない選択肢の一つが半乾燥地域への灌漑です。雨量は少ない(または不安定だ)が近くに水源が確保できる地域に灌漑施設を建設して、安定的に農業生産が可能な地域にする、というものです。
FAOのAQUASTATによると、灌漑可能なエリアは539千へクタール(耕作面積全体の9.5% 2003年統計)で、1993年の時点でその12%(66.6千ha、耕作面積の1.2%)、2003年の時点でその19%(103千ha、耕作面積の1.8%)のエリアで灌漑が敷設されています。また、水灌漑省の2005年の水開発報告によると、近年増加率が最も高いのが今回見学させて頂いたタイプの灌漑で、小規模農家が集まって作った水管理組合が運営する、いわゆる小規模灌漑です。その敷設面積は2003年に民間の商用灌漑施設(この分類の定義に関する説明はありませんでしたが、おそらく園芸作物などを生産する私企業・大規模農家の灌漑施設)の面積を抜いています。
小規模灌漑のウェイトが高まっているのは、1)初期投資額が小さいこと、2)比較的少数のお互いに近隣に住む受益者達が自主的に管理運営するので「フリーライダー」の問題や「共有地の悲劇」的な問題が小さいこと、3)一般にローテクを使うので自分たちで維持管理ができること、等の理由が上げられます。とは言え、やはり零細農家が全く自前で自主的に始めるというケースは少なく、多くの場合は政府や援助機関またはNGOが初めに資金的・技術的に手助けをし、軌道に乗ったら農民達に任せると行った形式で行われています。

私が今回見学させて頂いたのが当にそういうタイプの灌漑です。もともと、この地域では何軒かの農家が川から溝を掘り水を畑に引き込んで簡単な灌漑を行っていましたが、灌漑の効率が悪くごく限られた農家にしか水が行き渡っていませんでした。そこで、同じ水源でより広い地域で水を引き込めるような効率の良い灌漑の技術を紹介し、より多くの農家が安定的な農業生産をできるように、暮らしぶりがよくなるように促す、というのが私の知人が担当しているこの灌漑プロジェクトです。2005年に始まって今年の12月で支援は終わりますが、プロジェクト終了後に参加住民が自主的に灌漑維持管理また水路の拡張ができるように、これまでの活動の中で指導してきたようです。
プロジェクトのインパクト評価はこれからだそうですが、現地の農民から話を伺ったところ灌漑の農業生産への効果はやはり大きいようです。水管理組合の組合長に話によると、灌漑が可能になったことで土地の値段がここ3−4年で約2倍(50,000-80,000sh/エーカー が 100,000-150,000sh/エーカー)になったそうです。プロジェクトが始まって、実際に灌漑用水が利用できるようになったのは最近ですが、地域農民が灌漑がもたらす生産へそして収入へのプラスの影響を認識しているのは間違いありません。
プロジェクト終了後も、長期的に灌漑施設が運用され、また用水路が拡張されより多くの農民が継続的に利用出来るようになることを願います。追跡調査が可能なら、プロジェクト後の経過をフォローアップして、長期的なインパクトも評価して欲しいですね。誰もやらないようなら、私の将来の研究ネタとして密かに温めておきます。

*直接関係ありませんが、日本の治水に関する歴史が纏められているなかなか面白いサイトを見つけたので、紹介しておきます。水土の礎という(社)農業農村整備情報総合センターのサイトです。

建設途中の水路とキリマンジャロ
水路1メートル建設のための資材費用:2千シリング(約2400円)
水路1メートル建設のための資材費用:2千シリング(約2400円)
農業省の一つの部署だった灌漑・排水課(branch)が、2003年の省庁再編で水灌漑省の灌漑・排水局(department)に格上げされたことが示唆するように、ケニア政府は安定的な食料生産、農業生産性の増大、そして農民の生活改善の手段として、灌漑に以前にも増して着目しています。というのも、ケニアは国土の約80%が乾燥・半乾燥地域に分類される乾いた国ですから、天水に頼って安定的に農作物を生産できる地域が、限定されています。天水農業が可能なところは一般に人口密度が高く、そのために一戸あたりの作付面積が小さいので、少ない土地でできるだけ収穫量を増やすような技術(化学・有機肥料、高収量品種など)は、20年以上前からすでに取り入れられています。そうした地域で今後生産性を飛躍的に高めることは難しいでしょう。乾いた地域が多く、天水で農業が出来るところも、もうその潜在力をかなり使いきっている、という状況ですから、農業生産を増大させるためにできることは限られています。数少ない選択肢の一つが半乾燥地域への灌漑です。雨量は少ない(または不安定だ)が近くに水源が確保できる地域に灌漑施設を建設して、安定的に農業生産が可能な地域にする、というものです。
FAOのAQUASTATによると、灌漑可能なエリアは539千へクタール(耕作面積全体の9.5% 2003年統計)で、1993年の時点でその12%(66.6千ha、耕作面積の1.2%)、2003年の時点でその19%(103千ha、耕作面積の1.8%)のエリアで灌漑が敷設されています。また、水灌漑省の2005年の水開発報告によると、近年増加率が最も高いのが今回見学させて頂いたタイプの灌漑で、小規模農家が集まって作った水管理組合が運営する、いわゆる小規模灌漑です。その敷設面積は2003年に民間の商用灌漑施設(この分類の定義に関する説明はありませんでしたが、おそらく園芸作物などを生産する私企業・大規模農家の灌漑施設)の面積を抜いています。
小規模灌漑のウェイトが高まっているのは、1)初期投資額が小さいこと、2)比較的少数のお互いに近隣に住む受益者達が自主的に管理運営するので「フリーライダー」の問題や「共有地の悲劇」的な問題が小さいこと、3)一般にローテクを使うので自分たちで維持管理ができること、等の理由が上げられます。とは言え、やはり零細農家が全く自前で自主的に始めるというケースは少なく、多くの場合は政府や援助機関またはNGOが初めに資金的・技術的に手助けをし、軌道に乗ったら農民達に任せると行った形式で行われています。

スキーム別の灌漑面積の推移(縦軸:ha) source: Kenya national water development report 2005, Ministry of Water and Irrigation
私が今回見学させて頂いたのが当にそういうタイプの灌漑です。もともと、この地域では何軒かの農家が川から溝を掘り水を畑に引き込んで簡単な灌漑を行っていましたが、灌漑の効率が悪くごく限られた農家にしか水が行き渡っていませんでした。そこで、同じ水源でより広い地域で水を引き込めるような効率の良い灌漑の技術を紹介し、より多くの農家が安定的な農業生産をできるように、暮らしぶりがよくなるように促す、というのが私の知人が担当しているこの灌漑プロジェクトです。2005年に始まって今年の12月で支援は終わりますが、プロジェクト終了後に参加住民が自主的に灌漑維持管理また水路の拡張ができるように、これまでの活動の中で指導してきたようです。
プロジェクトのインパクト評価はこれからだそうですが、現地の農民から話を伺ったところ灌漑の農業生産への効果はやはり大きいようです。水管理組合の組合長に話によると、灌漑が可能になったことで土地の値段がここ3−4年で約2倍(50,000-80,000sh/エーカー が 100,000-150,000sh/エーカー)になったそうです。プロジェクトが始まって、実際に灌漑用水が利用できるようになったのは最近ですが、地域農民が灌漑がもたらす生産へそして収入へのプラスの影響を認識しているのは間違いありません。
プロジェクト終了後も、長期的に灌漑施設が運用され、また用水路が拡張されより多くの農民が継続的に利用出来るようになることを願います。追跡調査が可能なら、プロジェクト後の経過をフォローアップして、長期的なインパクトも評価して欲しいですね。誰もやらないようなら、私の将来の研究ネタとして密かに温めておきます。

調査旅行の軌跡
*直接関係ありませんが、日本の治水に関する歴史が纏められているなかなか面白いサイトを見つけたので、紹介しておきます。水土の礎という(社)農業農村整備情報総合センターのサイトです。
2010/04/15
タンザニア旅行
今日は久々にナイロビオフィスで仕事です。3月半ばから、アメリカ・イギリス・日本へ出張、4月2日にナイロビに戻り翌々日からタンザニアへ家族旅行、ナイロビに戻った翌日ワークショップで研究発表とバタバタしてました。
今回のタンザニア旅行は旅行業を営んでいる友人家族の企画で、その家族とわが家が自家用車で行って来ました。ほぼ全行程運転してきましたよ。走行距離約1500キロ、途中でスタック一度、パンク一度と我が家の車もラフロードに相当痛めつけれました。私は何度も車の故障で予定通り帰還できないのではと心配しましたが、旅を熟知した友人家族のサポートと車(日本の輸入中古車)の性能・耐久性のお陰で、サファリを満足行くまで堪能し、予定通りに帰還することが出来ました。
今回の旅は自分で運転したので、充実感が違いますね。疲れたけど。デコボコ道の走行も日に日に慣れて上手くなって行くのが分かりました。

動物沢山見ました。ビッグ5(象・ライオン・豹・バッファロー・サイ)も制覇したしね。ンゴロンゴロ・クレーターの中でチーターも見ました。

この岩は中が空洞になっていて石で叩くと良い音がします。小さな窪みが沢山ありますが、そのくぼみは石で何度も叩いた跡なんです。音色もくぼみ毎に微妙に違っています。マサイが儀礼で楽器として使っていたそうです。空がきれいでしょう。

上の写真Shifting Sandsと呼ばれる砂鉄からなる三日月型をした砂山で、草原の中に突如として現れます。強い風が吹いて砂がどんどん飛んでいるのに、砂山が維持されているのが不思議でした。近くのオルドバイ渓谷の学芸員(オルドバイ渓谷はアウストラロピテクス・アファレンシスの360万年前の足跡が見つかったところで小さな博物館がある)の話によると、Shifting Sandsは三日月型の砂山を維持しつつ少しづつ西へ移動しているそうです。
今回の旅行中も何時もの調査旅行の時と同様にGarminのGPS機器を常備し、ほぼ全ての行程のgeocodeを記録してきたのですが、当然砂山の位置もマークして来ました(2° 56.703'S 35° 18.886'E)。その周辺のGoogle Earthの衛生写真を見ていて、Shifting Sandsに関して小発見がありました(興味のある方はGoogle Earthで確認して見てください)。写真を拡大すると、砂山は私たちが行ってマークした地点よりも約90メートルくらい東に位置していて、確かに砂山が西に移動していることがわかります。少し縮尺を引いて見ると、砂山が東から西へ移動してきた軌跡が地面に残っています。もっと引いてみると同じような跡が幾筋も確認出来ます。同じような砂山が過去に幾つもあったことが分かります。我々が訪れた砂山より3.5キロほど北上した位置にはもう一つの砂山があります。どの筋の西の端も先細りになっていて、砂山は東から西へ移動し、やがて消滅していく運命にあることが容易に予想できます。筋を東にたどっていくと、筋は段々と北東の方角へと伸びています。地形の影響でその様な風の流れができるのでしょう。画像の解像度が低い(緑がかった)部分にまで筋が見えますので、相当な距離を移動しているようです。
今度行ったときにもう一度砂山の位置をマークするか、Googleの衛星写真が撮影された正確な時期がわかれば、移動速度がわかりますね。また、異なる時点での衛星写真でサイズの変化が分かれば、私たちが見た砂山がいつ消滅するか予測可能だと思います。

楽しい旅行でした。
追記:Shifting SandsのGoogle Earthの衛星写真の撮影日が分かりました。メイン・ウィンドウの左下角に出ているんですね。知らなかった。2005年1月16日です。Google Earthのルーラーを使って私がマークした位置と衛星写真の砂山の距離を計測すると、約90メートルあります。衛星写真がとられてから約5.25年経過しておりますので、砂山の移動速度は90/5.25で約17.1メートル/年となります。

今回のタンザニア旅行は旅行業を営んでいる友人家族の企画で、その家族とわが家が自家用車で行って来ました。ほぼ全行程運転してきましたよ。走行距離約1500キロ、途中でスタック一度、パンク一度と我が家の車もラフロードに相当痛めつけれました。私は何度も車の故障で予定通り帰還できないのではと心配しましたが、旅を熟知した友人家族のサポートと車(日本の輸入中古車)の性能・耐久性のお陰で、サファリを満足行くまで堪能し、予定通りに帰還することが出来ました。
今回の旅は自分で運転したので、充実感が違いますね。疲れたけど。デコボコ道の走行も日に日に慣れて上手くなって行くのが分かりました。
ヌーの群れ(セレンゲッティ国立公園内)
動物沢山見ました。ビッグ5(象・ライオン・豹・バッファロー・サイ)も制覇したしね。ンゴロンゴロ・クレーターの中でチーターも見ました。

岩(セレンゲッティ国立公園内)
この岩は中が空洞になっていて石で叩くと良い音がします。小さな窪みが沢山ありますが、そのくぼみは石で何度も叩いた跡なんです。音色もくぼみ毎に微妙に違っています。マサイが儀礼で楽器として使っていたそうです。空がきれいでしょう。
Shifting Sands(ンゴロンゴロ国立公園内)
上の写真Shifting Sandsと呼ばれる砂鉄からなる三日月型をした砂山で、草原の中に突如として現れます。強い風が吹いて砂がどんどん飛んでいるのに、砂山が維持されているのが不思議でした。近くのオルドバイ渓谷の学芸員(オルドバイ渓谷はアウストラロピテクス・アファレンシスの360万年前の足跡が見つかったところで小さな博物館がある)の話によると、Shifting Sandsは三日月型の砂山を維持しつつ少しづつ西へ移動しているそうです。
今回の旅行中も何時もの調査旅行の時と同様にGarminのGPS機器を常備し、ほぼ全ての行程のgeocodeを記録してきたのですが、当然砂山の位置もマークして来ました(2° 56.703'S 35° 18.886'E)。その周辺のGoogle Earthの衛生写真を見ていて、Shifting Sandsに関して小発見がありました(興味のある方はGoogle Earthで確認して見てください)。写真を拡大すると、砂山は私たちが行ってマークした地点よりも約90メートルくらい東に位置していて、確かに砂山が西に移動していることがわかります。少し縮尺を引いて見ると、砂山が東から西へ移動してきた軌跡が地面に残っています。もっと引いてみると同じような跡が幾筋も確認出来ます。同じような砂山が過去に幾つもあったことが分かります。我々が訪れた砂山より3.5キロほど北上した位置にはもう一つの砂山があります。どの筋の西の端も先細りになっていて、砂山は東から西へ移動し、やがて消滅していく運命にあることが容易に予想できます。筋を東にたどっていくと、筋は段々と北東の方角へと伸びています。地形の影響でその様な風の流れができるのでしょう。画像の解像度が低い(緑がかった)部分にまで筋が見えますので、相当な距離を移動しているようです。
今度行ったときにもう一度砂山の位置をマークするか、Googleの衛星写真が撮影された正確な時期がわかれば、移動速度がわかりますね。また、異なる時点での衛星写真でサイズの変化が分かれば、私たちが見た砂山がいつ消滅するか予測可能だと思います。

今回の旅行の走行の軌跡
楽しい旅行でした。
追記:Shifting SandsのGoogle Earthの衛星写真の撮影日が分かりました。メイン・ウィンドウの左下角に出ているんですね。知らなかった。2005年1月16日です。Google Earthのルーラーを使って私がマークした位置と衛星写真の砂山の距離を計測すると、約90メートルあります。衛星写真がとられてから約5.25年経過しておりますので、砂山の移動速度は90/5.25で約17.1メートル/年となります。

Shifting Sandsの衛星写真(Google Earth)
2010/02/17
Boserupとアフリカ農業
最近アフリカの異なる地域の農法の違いを見る機会が増えるにつけ、Boserup(1965)の中で、彼女が40年以上前に言った事は当たっているな、としみじみ思います。マルサス理論、つまり「食料供給と農業技術が人口のサイズを決定する」という言説に対して、彼女は、「人口のサイズが農業技術を決定する」と説きます。この説は、マルサス理論と対立する議論というより、所与の条件として考えていた農業技術を、人口圧力によって変化する(内生的に決定される)変数として捉えた拡張モデルと言えます。人口はマルサスの言うように幾何級数的に増えていますが、算術級数的にしか増えないと考えられた食料生産も、技術進歩のお陰で人口成長率以上のペースで増えています。
速水佑次郎先生の「誘発技術革新(induced technology innovation)」の議論も、Boserupと同じライン上にあって、労働力が希少になってくると労働節約的な技術の、そして土地が希少になってくると土地節約的な技術の採用や開発が進むというものです。まさに「必要は発明の母」ってやつです。ただし、途上国の場合、「発明」しなくても、どこかですでに発明された技術を「採用」すれば良いというケースが、結構あったりします。そういうところでは「必要は採用の母」で、必要としている技術を紹介すると、一気に普及したりします。私が行っているウガンダのプロジェクトで、集約的農法のための農業インプット(肥料・高収量品種)を紹介したところ、そうしたインプットの採用が急に増えたのも、そうした技術が必要だったからでしょう。
潜在的な需要はあるんだけど、まだ知られていないために普及していないという技術・製品がアフリカでは数多くあるはずです。(だって、よそでは使われているけどここでは普及していないものって沢山あるでしょう。)また、多くのアフリカの国々で情報・交通インフラは確実に改善していますから、以前にも増してそういう技術・製品が増えているはずです。
アフリカにはビジネス・チャンスがごろごろしているような気がします。なら、自分で商売すればと言われそうですね…。
速水佑次郎先生の「誘発技術革新(induced technology innovation)」の議論も、Boserupと同じライン上にあって、労働力が希少になってくると労働節約的な技術の、そして土地が希少になってくると土地節約的な技術の採用や開発が進むというものです。まさに「必要は発明の母」ってやつです。ただし、途上国の場合、「発明」しなくても、どこかですでに発明された技術を「採用」すれば良いというケースが、結構あったりします。そういうところでは「必要は採用の母」で、必要としている技術を紹介すると、一気に普及したりします。私が行っているウガンダのプロジェクトで、集約的農法のための農業インプット(肥料・高収量品種)を紹介したところ、そうしたインプットの採用が急に増えたのも、そうした技術が必要だったからでしょう。
潜在的な需要はあるんだけど、まだ知られていないために普及していないという技術・製品がアフリカでは数多くあるはずです。(だって、よそでは使われているけどここでは普及していないものって沢山あるでしょう。)また、多くのアフリカの国々で情報・交通インフラは確実に改善していますから、以前にも増してそういう技術・製品が増えているはずです。
アフリカにはビジネス・チャンスがごろごろしているような気がします。なら、自分で商売すればと言われそうですね…。
マトケ(バナナ)と化学肥料
ウガンダのマトケ*の話がAfrican Agricultureというblogで紹介されていました。ウガンダではほとんどの農家がバナナ生産に化学肥料を使っていません。バナナの産地として有名なムバララの中心地はウガンダで3番目(たぶん?)の規模の街ですが、農業インプットの販売店に行っても化学肥料を売っていません(2008年9月、2010年1月ムバララ訪問時の聞き取り調査で確認)。

今の所そういう状況なのですが、記事によると少量の化学肥料の施肥でバナナの収量が大幅に上がるとともに、果実が成熟するのに要する期間が短縮されるとのこと。内陸国のウガンダでは輸入に頼る化学肥料の値段が高く、肥料の収益率が他国より低いのは確かなのですが、それでも高い収益率が見込める地域があるとのこと。収益率を上げる方法として、記事の中では、窒素・リン酸・カリウムの成分が固定されている一般に流通しているパッケージ製品ではなく、土壌に不足している成分を中心に配合した肥料を使用することを上げています。農家が自分で効果的な肥料をブレンドするためには、土壌調査をしなければならないのですが、土壌調査のコストは大したことはないし、少し知識があれば自分でできます。
前回のウガンダの調査の時に、調査対象家計の土壌の簡易調査も行ったのですが、その時に使用したマケレレ大学の土壌科学の教授が開発したという簡易テストキットは試薬と試験管等のセットで約90米ドルで60件分できるというものでした。添付の説明書通りにやればできるので、字が読めればできます。

農業普及委員が村単位で分析すれば、1件当たり土壌調査費用が1.5ドルですから、安いものです。ただし、ウガンダでも私の知る限り多くの地域で農業普及員の制度が上手く機能しておらず、農業普及委員制度が改善されなければ普及員を通じての分析の実施は難しいですね。農業普及員が役に立たなくても、うまくやれば民間でもペイすると思うんですがね。農業インプットの取扱店で、農家が持参した土壌サンプルを受付て有料で分析及び診断を行う、というのはどうでしょう。土壌調査をしてその結果をもとに作物に応じた土壌改良の処方箋を作るには、その調査データと希望の土壌成分とをつなぐマッピング情報が必要ですが、農学の知見の蓄積から借りてくれば、簡単なチャートを作るのも難しくないでしょう。そんな用途のPC用ソフトウェアもあるようですし。次回のプロジェクトで、簡易テストの結果をもとに作った特製ブレンドの肥料がどのくらいインプット費用を削減し、収量を上げるのかやってみようかな。ぜんぜん経済学ではないですが…。
土壌に足りない成分のみを施肥し肥料のコストを下げる他に、肥料の収益率を決めるもう一つの重要な要因は、バナナの生産者価格です。バナナは生鮮果物なので、輸送距離は商品の価値に大きく影響を与えます。いくら肥料が収穫量を増やすとしても、市場から遠い僻地では肥料の使用は、経済的に合理的な判断ではなくなってしまします。こういうところで頑張って普及活動をしても不毛です。ただ、道路が整備されたりすると状況が一変します。ウガンダは2011年の次期大統領選挙を控え現ムセベニ政権の元、道路整備を至る所でやっています。農民の市場へのアクセスは間違いなく改善するので、肥料の収益率が上がり、肥料の使用がペイする地域が拡大するのは間違いないでしょう。
*マトケはウガンダの多くの地域の主食。青いバナナの皮をむき、芋煮の要領で煮、マッシュポテトの要領で潰して出来上がり、という簡単な料理です。因みにバナナ自体もマトケと呼ばれます。



ムバララ近郊。写真中央の緑の濃いところがバナナ畑。
今の所そういう状況なのですが、記事によると少量の化学肥料の施肥でバナナの収量が大幅に上がるとともに、果実が成熟するのに要する期間が短縮されるとのこと。内陸国のウガンダでは輸入に頼る化学肥料の値段が高く、肥料の収益率が他国より低いのは確かなのですが、それでも高い収益率が見込める地域があるとのこと。収益率を上げる方法として、記事の中では、窒素・リン酸・カリウムの成分が固定されている一般に流通しているパッケージ製品ではなく、土壌に不足している成分を中心に配合した肥料を使用することを上げています。農家が自分で効果的な肥料をブレンドするためには、土壌調査をしなければならないのですが、土壌調査のコストは大したことはないし、少し知識があれば自分でできます。
前回のウガンダの調査の時に、調査対象家計の土壌の簡易調査も行ったのですが、その時に使用したマケレレ大学の土壌科学の教授が開発したという簡易テストキットは試薬と試験管等のセットで約90米ドルで60件分できるというものでした。添付の説明書通りにやればできるので、字が読めればできます。

手前のバッグが土壌テストのキット。
農業普及委員が村単位で分析すれば、1件当たり土壌調査費用が1.5ドルですから、安いものです。ただし、ウガンダでも私の知る限り多くの地域で農業普及員の制度が上手く機能しておらず、農業普及委員制度が改善されなければ普及員を通じての分析の実施は難しいですね。農業普及員が役に立たなくても、うまくやれば民間でもペイすると思うんですがね。農業インプットの取扱店で、農家が持参した土壌サンプルを受付て有料で分析及び診断を行う、というのはどうでしょう。土壌調査をしてその結果をもとに作物に応じた土壌改良の処方箋を作るには、その調査データと希望の土壌成分とをつなぐマッピング情報が必要ですが、農学の知見の蓄積から借りてくれば、簡単なチャートを作るのも難しくないでしょう。そんな用途のPC用ソフトウェアもあるようですし。次回のプロジェクトで、簡易テストの結果をもとに作った特製ブレンドの肥料がどのくらいインプット費用を削減し、収量を上げるのかやってみようかな。ぜんぜん経済学ではないですが…。
土壌に足りない成分のみを施肥し肥料のコストを下げる他に、肥料の収益率を決めるもう一つの重要な要因は、バナナの生産者価格です。バナナは生鮮果物なので、輸送距離は商品の価値に大きく影響を与えます。いくら肥料が収穫量を増やすとしても、市場から遠い僻地では肥料の使用は、経済的に合理的な判断ではなくなってしまします。こういうところで頑張って普及活動をしても不毛です。ただ、道路が整備されたりすると状況が一変します。ウガンダは2011年の次期大統領選挙を控え現ムセベニ政権の元、道路整備を至る所でやっています。農民の市場へのアクセスは間違いなく改善するので、肥料の収益率が上がり、肥料の使用がペイする地域が拡大するのは間違いないでしょう。
*マトケはウガンダの多くの地域の主食。青いバナナの皮をむき、芋煮の要領で煮、マッシュポテトの要領で潰して出来上がり、という簡単な料理です。因みにバナナ自体もマトケと呼ばれます。

バナナ。大きい一房で約4−5ドル。カンパラで買うと倍の値段。

左の皿の黄色いペーストがマトケ。アシスタントの実家に寄ったときにご馳走になりました。
2010/01/06
Matatu Strike
年明け早々、ナイロビ市民の足である乗合バス(matatu)の組合が、仕事初めの月曜日から「警察官のハラスメントをなんとかせいや」と抗議のストライキを始めました。街は混乱していたのですが、先日、オディンガ首相が出てきて「何とかするから」と、ストライキは収束に向うようです。
ストのおかげでこの2、3日、普段マタトゥを利用している市民は歩いて仕事に通ってます。私は車で出勤しているのですが、朝夕車道の脇を歩いている市民を普段の数倍見かけます。昨日はいつも利用しているガスステーションで給油したら、夜勤明けの顔見知りの従業員が私の職場の近くまで乗せていって欲しいと頼んできました。彼の話だと皆4時起きで街まで3、4時間かけて歩いてるとのこと。
安全のためということで2004年から交通法規が厳しくなり、乗合バスでもシートベルトの着用が義務づけられ、定員規制が厳しくなりました。また、去年の暮に騒音規制も厳しくなり、マタトゥの車掌の客引きのための口笛・大声やカーステレオのサウンドも規制の対象となり、マタトゥドライバーが逮捕されるということもありました。こうしたマタトゥ営業に関わる規制が強化されたことで、交通警官のマタトゥ運転手へのツッコミどころが多くなり賄賂の要求が以前よりも激しくなってきているようです。Daily Nationの記事によると、ナイロビ市内で営業しているマタトゥのオーナーの1日の利益は10,000sh (1USD=75.4sh、2009/1/6時点)で、その中から警官への賄賂やムンギキへのみかじめ料などの不法な支払いとして、1,000shくらい支出しているようです。
ストライキ中にも少数ですが、マタトゥが客を乗せて走っているのを見かけました。マタトゥのオーナーからみかじめ料として徴収される資金はムンギキの活動資金に使われているし、ムンギキの構成員がマタトゥの運転手や車掌をやっていることもあるようです。このマタトゥ産業とムンギキの密接な関係を知ると、スト破りの制裁は怖くないのだろうか、と他人事ですが心配になってしまいました。
昨日のDaily Nationには、モンバサでスト破りのマタトゥを燃やした若者たちが捕まっている写真が載ってました。
参照URL1,参照URL2
ストのおかげでこの2、3日、普段マタトゥを利用している市民は歩いて仕事に通ってます。私は車で出勤しているのですが、朝夕車道の脇を歩いている市民を普段の数倍見かけます。昨日はいつも利用しているガスステーションで給油したら、夜勤明けの顔見知りの従業員が私の職場の近くまで乗せていって欲しいと頼んできました。彼の話だと皆4時起きで街まで3、4時間かけて歩いてるとのこと。
安全のためということで2004年から交通法規が厳しくなり、乗合バスでもシートベルトの着用が義務づけられ、定員規制が厳しくなりました。また、去年の暮に騒音規制も厳しくなり、マタトゥの車掌の客引きのための口笛・大声やカーステレオのサウンドも規制の対象となり、マタトゥドライバーが逮捕されるということもありました。こうしたマタトゥ営業に関わる規制が強化されたことで、交通警官のマタトゥ運転手へのツッコミどころが多くなり賄賂の要求が以前よりも激しくなってきているようです。Daily Nationの記事によると、ナイロビ市内で営業しているマタトゥのオーナーの1日の利益は10,000sh (1USD=75.4sh、2009/1/6時点)で、その中から警官への賄賂やムンギキへのみかじめ料などの不法な支払いとして、1,000shくらい支出しているようです。
ストライキ中にも少数ですが、マタトゥが客を乗せて走っているのを見かけました。マタトゥのオーナーからみかじめ料として徴収される資金はムンギキの活動資金に使われているし、ムンギキの構成員がマタトゥの運転手や車掌をやっていることもあるようです。このマタトゥ産業とムンギキの密接な関係を知ると、スト破りの制裁は怖くないのだろうか、と他人事ですが心配になってしまいました。
昨日のDaily Nationには、モンバサでスト破りのマタトゥを燃やした若者たちが捕まっている写真が載ってました。
参照URL1,参照URL2
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