2010/07/03

価格統制法

先週、ケニア議会でトウモロコシ・麦・燃料などの必需品の価格を統制する法案が可決されました(Daily Naitionの記事)。キバキ大統領が署名をすると施行されるようです。昨年の第一耕作期がひどい旱魃で、穀物価格が高騰し国民から不満の声が上がりました。それに反応した議員が去年議会に法案を提出していたようです。

価格統制の弊害は、経済学の初歩の初歩で習いますし、歴史が沢山の実例を示しています。なぜこんな法案が議会をあっさり通ってしまったのか疑問です。(たとえマトモな経済顧問がいないとしても、ドナー各国の関係者がイチャモンをつけそうなものですが…)

農産物の最高価格を設定すると、不作で供給が減ったとき、その値段で買いたくても手に入らない消費者が出てきます。その帰結として考えられるのは、i)一部の人々が特権的に生産物を取得し、店から商品が消える、ii)闇市ができて違法に取引される、iii)高値で取引されている近隣諸国に生産物が流れ、国内供給量がさらに減る、そんな所でしょう。更に、生産者側もこの法案に反応するでしょう。まず、対象作物が高値で売れなくなりますから、そうした作物の栽培のインセンティブが減り、供給が減ります。次いで、肥料や高収量品種などの農業インプットへの投資のリターンも下がりますから、投資を控えるようになり、生産性が下がり更に供給が減り、品不足に陥ることが予想できます。

勿論、価格規制が社会厚生を引き上げるケース(規制対象の財が、独占的に供給されていて価格が限界費用を超えている場合のみ)もありますが、どう考えてもケニアの農産物はそうしたケースには当てはまらないでしょう。

キバキ大統領はLondon School of Economicsで経済学を学んだそうですので、学んだことを活かして、是非ともこの法案を廃案に持ち込んで欲しいものです。

1 件のコメント:

  1. キバキ大統領は拒否権を行使して、この法案を廃案にしていました。

    http://www.nation.co.ke/News/-/1056/1001250/-/item/0/-/wyrk2dz/-/index.html

    やるじゃん。大統領のブレーンのエコノミストは、議会に影響力はないけど、大統領は説得できるのね。なるほど。

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