2011/06/08

論文執筆の合間に

先週、留学時代の指導教官がナイロビに来ていて、最近の研究の内容をじっくり話す機会があり、久しぶりにアドバイスをもらった。開発経済学系の学術雑誌のEditorを長年やってるだけあって、最近の研究動向をよく知っている。そこで、ここ2日間は彼のコメントを踏まえて、論文のイントロおよび先行研究のセクションを書きなおしている。

イントロは一番苦手なところだ。同業者の方は同感してくれると思うけど、分析の記述は簡単なんだよね。式や表を説明するだけだから。でも一番大事なのはイントロ部分、そこで読んでもらえるかどうかが決まるから。次に苦手なのは、先行研究の紹介。このパートでは、これまでに何が分かっていて何が分かっていないかを文献を交えて解説し、論文の売りを強調する。沢山の著作物を有機的に分類し、研究の流れを分かりやすく纏めるって難しい。(沢山読まなければいけないし。)私見だと、サイエンス系に比べて経済学の論文は、この先行文献のパートがとても長い。特に、幅広いテーマを対象とするトップジャーナル(AER, QJE, JPE, etc)は専門が異なる多くの読者がいるだけあって、しっかりと書かれている。なので良いジャーナルを狙うならこの部分も手を抜けない。(Public health関係の仕事をされている方に、経済系のHIV-AIDSのテーマを扱った論文を紹介したら、その長さに驚いていた。)

今日の午前中は、論文の筆がなかなか進まないので、参考文献覧に載せているにも関わらず、読んでいなかった有名な古典的論文を読んでみた。有名なので内容は間接的に大体知っているというシロモノ。

Hybrid Corn: An Exploration in the Economics of Technological Change by Zvi Griliches in Econometrica 1957.

20世紀初頭から半ばまでのアメリカでのハイブリッド・コーンの種の普及について書かれた論文なんだけど、最後の文章は、「アフリカで技術普及がなぜか進まない」という言説を聞く度に私も常々思っていることなので、引用しておく。
On the whole, taking account of uncertainty and the fact that the spread of knowledge is not instantaneous, farmers have behaved in a fashion consistent with the idea of profit maximization. Where the evidence appears to indicate the contrary, I would predict that a closer examination of the relevant economic variables will show that the change was not as profitable as it appeared to be.
普及しない技術は儲からない(便益が小さい)技術ということ。便益が大きければ普及のスピードも早いんだよね。携帯・モバイルマネーの普及のスピードが、そのことを裏付けている。便利な技術・儲かる技術はアフリカでも普及する。

アフリカでも道路・情報ネットワークなどのインフラが格段に良くなってきている。市場・情報へのアクセスが改善され、ある技術・商品が潜在的に儲かる地域が急速に拡大している。つまり、「誰も使っていない」から「皆が使う」状態へ移行するであろう技術が沢山あるってこと。どういう技術・商品がその条件を満たすか、歴史、他の地域の経験がヒントを与えてくれる。今ならアイデア勝負で、成功するビジネスが沢山あるはず。まさに今がアフリカ進出、投資のチャンスだと思いませんか?

それにしても、話が大分それたな。こんなんだからliterature reviewが書けないんだ。

2011/05/06

National Council for Science and Technology Annual Conference

先日(5/3)知合いに頼まれて、ケニアのNCST(科学技術評議会 or 委員会?)の年総会で発表して来ました。事前にプログラムを頂いていなくて(どうやらプログラムは会議の直前まで完成していなかったらしい。ケニアらしいでしょ。)、どういう会議なのか良く理解しないまま、自分の発表の30分前に会場(Kenyatta International Conference Centre、ナイロビで一番大きな会議場)に到着して、プログラムを見て仰天。私の出番は、なんと、オープニングセレモニーの直後のKeynoteではありませんか。大きな会議室に入ると、高等教育省の大臣、日本国大使館公使、その他お偉いさんがステージ上に着席されていて、NCSTの長官が発表していました。プログラムによると長官の発表の直後に私の出番。聞いてないっす。しかし、意外に落ち着いていて、スーツ着て来て良かったとか思いつつ(直前まで、ジーンズとジャケットで行こうか迷ってた)、折角なので大臣にも発表を聞いてもらいましょうとか思っていました。長官の発表も終盤にさしかかり、流石にドキドキしてきて、深呼吸、深呼吸。その緊張感を「楽しめ、楽しめ」と自分に言い聞かせつつ待機していたら、アナウンスが入り、どうやらティーブレイクが入るらしいことが判明。大臣他お偉いさんらは退場。なんだよ、俺の発表は聞かないのか。少し残念。

ティーブレイク後、セッション再会。3割くらいの聴衆はどこかに行ってしまいましたが、いつもの学会よりもずっと多い。30分のつもりで用意してきて、プログラムでも30分割り当てられているのに、セッションのチェアに20分でお願いしますと、しれっと言われ、発表開始。聴衆を見回すと少しざわついていて、あまり聞いてない。とっさにスワヒリ語で挨拶を始めてみました。”Mimi ni Tomoya. Ninatoka Japan lakini sasa ninaishi Nairobi kufanya kazi ya utafiti. Ninataka kuongea kuhusu utafiti ya Uganda leo.” とっさのアドリブでしたが、 効果テキメンで皆こちらに注目してくれました。発表は色々な所ですでに発表している農業の技術普及に関する論文だったので、無難にこなせたと思います。たぶん。発表後、何人かの聴衆が話しかけてきました。皆私がスワヒリ語がペラペラだと思っている。本当は幾つか言い慣れたフレーズがある程度なんですけどね。

今回は、何人かのケニア人研究者と知合いになれたので収穫ありでした。

2011/03/28

ブログ再開

忙しくなるとすぐ更新しなくなり、更新しない期間が長引くと、なかなか再開できなくなる。ブログの「引きこもり」の様な状態が続いてる。なんとも情けない。始めたときはもう少し、軽いネタを書いていたんだが、だんだんと重くなり、終いには「書くからには、私にしか書けないことを誰にでもわかるように書く」という課題を勝手に課して、書けなくなっていた。論文や本を書いているわけじゃないんだから、読者が沢山いるわけでもないんだから、文章を書く練習と、思いついたアイデアの備忘録として、これからは、もう少し気楽に書いてみたい。