2010/09/24

穀物保険(Kilimo Salama)の現状視察

以前のポストで紹介した天候インデックス型穀物保険(Kilimo Salama)の現状を知るために、9月14日から4日間WesternとNyanza方面を回って、保険を取り扱っている農業インプット販売店を訪問し、話を聞いてきた。

以下聞き取りの内容を中心に、Kilimo Salamaの現状を述べる。

Kilimo Salama の特徴

1. 天候インデックス穀物保険である。対象の穀物はメイズと小麦で、保険加入者に対し、旱魃(drought)と超過雨(excess rain)の場合に保険金の支払いが行われる。保険金支払の判定は保険購入者の最寄の天候観測所のデータを元になされる。
2. 農業インプットとの抱き合わせで販売される。保険はインプットコストの5%を支払うことで加入できる。保険金は最大でインプットコストの100%を補償する。
3. 保険加入が農業インプット販売店でのモバイル操作で完了する。書類への記入などは必要ない。
4. 保険金がモバイル・マネー(M-pesa)で支払われる。

Kilimo Salama の展開

Kilimo Salamaのパイロット・プロジェクトは2009年の2−3月にNanyukiで始まり、今年(2010年)の2−3月から他の地域でも展開を始めた。耕作期が2期ある地域では、この8-9月にも販売されている。
現時点で、36店舗でKilimo Salamaの販売が行われおり、延11,000人の顧客が保険を購入している。

訪問した販売店で、保険購入者数、掛け金の合計額を聞き取りしたが、記録をつけている販売店が少なく、大まかな数字しか分からなかった。ただし、まだまだ保険加入率は非常に低い。販売員へのインタビューでは、加入率が低い理由として、認知度が低い、保険に対して良いイメージを持っていない等が挙げられた。認知度を上げるための活動としては、ラジオ番組・新聞での告知、農民グループを対象とするワークショップでの宣伝、店頭での宣伝という方法が取られている。

穀物保険の存在を知っていたとしても、その多くがまだ様子を伺っているようである。Busiaに近いFunyulaのAgrovetで聞いた話によると、今年の第一耕作期に保険購入者に対し払い戻しがあり、第二耕作期に加入者が急増した、ということがあったそうだ。逆に払い戻しが無く、次期の加入者が減少するというケースもあり得る。幾つかの販売店で、加入者から天候不良なのに保険金支払がない、というクレームがあったと言う話も耳にした。

現時点では、加入率が低く、販売した保険額も小さく、ビジネスとして成立するレベルでは無い。今後しばらくの間は、援助機関のサポート無しでは運営は困難なように思う。また、農民への効果も限定的で、保険商品を改善していく必要性がありそうだ。例えば、掛け金が高くて、保険金額も大きいという商品があったら良いという声があった。

Kilimo Salama の対象地域

現在、保険販売を行っている農業インプット販売店(agrovet)の所在地は以下の通りである。(それぞれの地域の取り扱い店の数、天候観測所の数を括弧内に分かる範囲で示した。)保険の対象となる農家は最寄の観測所から直線距離で20km以内とされている。ただし、最寄の観測所は保険加入者の自己申告によるので、範囲外でも購入は可能。

Central県
Embu

Western県
Busia /Bungoma (取扱店:12店・観測所:7箇所)

Rift Valley県
Eldoret (取扱店:9店・観測所:7箇所)

Nanyuki

Nyanza県
Oyugis/Homa Bay(取扱店:9店・観測所:5箇所)

今回聞き取りを行ったのは、上記のうちEldoret(2店)・Bungoma(2店)・Busia(3店)・Oyugis(2店)。



今回の旅の軌跡
走行距離約1500km