2010/02/17

マトケ(バナナ)と化学肥料

ウガンダのマトケ*の話がAfrican Agricultureというblogで紹介されていました。ウガンダではほとんどの農家がバナナ生産に化学肥料を使っていません。バナナの産地として有名なムバララの中心地はウガンダで3番目(たぶん?)の規模の街ですが、農業インプットの販売店に行っても化学肥料を売っていません(2008年9月、2010年1月ムバララ訪問時の聞き取り調査で確認)。


ムバララ近郊。写真中央の緑の濃いところがバナナ畑。



今の所そういう状況なのですが、記事によると少量の化学肥料の施肥でバナナの収量が大幅に上がるとともに、果実が成熟するのに要する期間が短縮されるとのこと。内陸国のウガンダでは輸入に頼る化学肥料の値段が高く、肥料の収益率が他国より低いのは確かなのですが、それでも高い収益率が見込める地域があるとのこと。収益率を上げる方法として、記事の中では、窒素・リン酸・カリウムの成分が固定されている一般に流通しているパッケージ製品ではなく、土壌に不足している成分を中心に配合した肥料を使用することを上げています。農家が自分で効果的な肥料をブレンドするためには、土壌調査をしなければならないのですが、土壌調査のコストは大したことはないし、少し知識があれば自分でできます。

前回のウガンダの調査の時に、調査対象家計の土壌の簡易調査も行ったのですが、その時に使用したマケレレ大学の土壌科学の教授が開発したという簡易テストキットは試薬と試験管等のセットで約90米ドルで60件分できるというものでした。添付の説明書通りにやればできるので、字が読めればできます。


手前のバッグが土壌テストのキット。



農業普及委員が村単位で分析すれば、1件当たり土壌調査費用が1.5ドルですから、安いものです。ただし、ウガンダでも私の知る限り多くの地域で農業普及員の制度が上手く機能しておらず、農業普及委員制度が改善されなければ普及員を通じての分析の実施は難しいですね。農業普及員が役に立たなくても、うまくやれば民間でもペイすると思うんですがね。農業インプットの取扱店で、農家が持参した土壌サンプルを受付て有料で分析及び診断を行う、というのはどうでしょう。土壌調査をしてその結果をもとに作物に応じた土壌改良の処方箋を作るには、その調査データと希望の土壌成分とをつなぐマッピング情報が必要ですが、農学の知見の蓄積から借りてくれば、簡単なチャートを作るのも難しくないでしょう。そんな用途のPC用ソフトウェアもあるようですし。次回のプロジェクトで、簡易テストの結果をもとに作った特製ブレンドの肥料がどのくらいインプット費用を削減し、収量を上げるのかやってみようかな。ぜんぜん経済学ではないですが…。

土壌に足りない成分のみを施肥し肥料のコストを下げる他に、肥料の収益率を決めるもう一つの重要な要因は、バナナの生産者価格です。バナナは生鮮果物なので、輸送距離は商品の価値に大きく影響を与えます。いくら肥料が収穫量を増やすとしても、市場から遠い僻地では肥料の使用は、経済的に合理的な判断ではなくなってしまします。こういうところで頑張って普及活動をしても不毛です。ただ、道路が整備されたりすると状況が一変します。ウガンダは2011年の次期大統領選挙を控え現ムセベニ政権の元、道路整備を至る所でやっています。農民の市場へのアクセスは間違いなく改善するので、肥料の収益率が上がり、肥料の使用がペイする地域が拡大するのは間違いないでしょう。

*マトケはウガンダの多くの地域の主食。青いバナナの皮をむき、芋煮の要領で煮、マッシュポテトの要領で潰して出来上がり、という簡単な料理です。因みにバナナ自体もマトケと呼ばれます。


バナナ。大きい一房で約4−5ドル。カンパラで買うと倍の値段。




左の皿の黄色いペーストがマトケ。アシスタントの実家に寄ったときにご馳走になりました。

2 件のコメント:

  1. フィリピン駐在員2010年2月18日 23:39

    オリジナル・ブレンド肥料の効果も、道路整備による肥料の収益率改善も、非常に興味深いです!ぜひ実証結果として見られるのを楽しみにしています。

    個人的には、ウガンダでよく朝ご飯に食べた、マトケと牛もつのトマト煮込みがちょっと懐かしいです。

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  2. 貧困対策がバナナに向かうこと自体に矛盾をはらんでいる気がします……バナナのフェアトレードなども批判対象とする商業構造の上で展開していますね。ひとつの現実論なのでしょうね。

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