2010/07/05

M-Kesho (モバイルバンク口座)

Safaricomのモバイル・マネー絡みで新しいサービスが始まった。以前のエントリーでM-Pesa(ケニアのモバイル・ネットワーク・プロバイダーであるSafaricomがサービスを提供しているモバイル・マネー)を紹介したが、今度はEquity Bankと組んで、M-Keshoなるサービスを開始した。因みに"Kesho"は「明日」という意味のスワヒリ語。このサービス・アカウントはM-Pesa口座をもつ利用者であれば開設できる。(今のところ、National IDが必要で、PassportやAlien IDでは開設出来ないよう。)

M-Pesaが送金手段であるのに対し、M-Keshoは銀行口座で、預金には利子もつくし、小口(5,000Kshまで)の短期融資(30日間)の申請もできる。なお、申請が受理されるかどうかは、個人のクレジット履歴で判断される。利用者はM-Pesa口座とM-Kesho口座間の預金の振替、ローン申請、生命保険の加入など、色々な金融サービス取引を携帯電話のSMSで行うことができる。M-Pesa口座に移した預金は、通常のM-Pesa預金なので、M-Pesa取り扱いブースで現金化したり、SMSで送金したりできる。

預金に利子がつくだけじゃなく、小口融資の申請が簡単に行えるのは、日頃、小額の運転資金の工面に悪戦苦闘している町の物売りや零細企業にとっては非常に魅力的だ。モバイル技術の発展で、小口の金融サービスの取引費用が激減したために、個人商店主も零細農家もそうしたサービスの恩恵を受けられる様になってきた。今、ケニアの金融サービスの展開は目を離せない。ケニアの経済が10年後どうなっているか、非常に楽しみである。

追記:この金融サービスが可能になったのは、最近金融サービスに関する法律が改正されたからのようですが、同じ議会で価格統制法が可決されてたのは非常に頂けない。

2010/07/03

価格統制法

先週、ケニア議会でトウモロコシ・麦・燃料などの必需品の価格を統制する法案が可決されました(Daily Naitionの記事)。キバキ大統領が署名をすると施行されるようです。昨年の第一耕作期がひどい旱魃で、穀物価格が高騰し国民から不満の声が上がりました。それに反応した議員が去年議会に法案を提出していたようです。

価格統制の弊害は、経済学の初歩の初歩で習いますし、歴史が沢山の実例を示しています。なぜこんな法案が議会をあっさり通ってしまったのか疑問です。(たとえマトモな経済顧問がいないとしても、ドナー各国の関係者がイチャモンをつけそうなものですが…)

農産物の最高価格を設定すると、不作で供給が減ったとき、その値段で買いたくても手に入らない消費者が出てきます。その帰結として考えられるのは、i)一部の人々が特権的に生産物を取得し、店から商品が消える、ii)闇市ができて違法に取引される、iii)高値で取引されている近隣諸国に生産物が流れ、国内供給量がさらに減る、そんな所でしょう。更に、生産者側もこの法案に反応するでしょう。まず、対象作物が高値で売れなくなりますから、そうした作物の栽培のインセンティブが減り、供給が減ります。次いで、肥料や高収量品種などの農業インプットへの投資のリターンも下がりますから、投資を控えるようになり、生産性が下がり更に供給が減り、品不足に陥ることが予想できます。

勿論、価格規制が社会厚生を引き上げるケース(規制対象の財が、独占的に供給されていて価格が限界費用を超えている場合のみ)もありますが、どう考えてもケニアの農産物はそうしたケースには当てはまらないでしょう。

キバキ大統領はLondon School of Economicsで経済学を学んだそうですので、学んだことを活かして、是非ともこの法案を廃案に持ち込んで欲しいものです。