今回のガソリン不足の背景は今日のDaily Nationの記事にありました。原因は小売業者が燃料の市場価格の下落を予想し、元売からの購入を買い控えていたことがあるようです。つまり、高い卸売価格で元売から今日買い、数日後に市場価格が大幅に下がってしまうと、利ざやがマイナスになってしまうという状況を予想し、小売業者が買い控えをし、品不足になったというわけです。
でも、品不足になるくらいですから、卸売価格が急に下がったとしても、在庫を抱えている小売業者が急に小売価格を下げる必要は無く、そうすると市場価格も急には下がらず、徐々に下がって行きそうなものです。だとすると、小売業者は、燃料の卸売価格の下落を気にして、買い控える必要もなく、急な品不足は起らなそうなものです。
なのにガソリン不足が起こってしまう訳は、ケニア特有の事情があります。新聞記事には解説はありませんが、燃料価格の規制にあります。ケニアの燃料価格は、エネルギー規制委員会(Energy Regulatory Commission)が上限価格を規定していて、それに違反した小売業者は罰金(100万シリング)を納めなければなりません。上限価格は、ある公式にその時の卸売価格と輸送費などを代入すると決まるようになっているので、卸売価格の変動が、上限価格に直接影響します。このために、卸売価格が下落すると、小売価格の上限も自動的に下落する仕組みになっているのです。だから卸売価格の大幅な下落が予想されると、買い控えなんかが起こるんです。
価格統制が無ければ、そんなことも起こらないんですけどねえ。以前の記事にも価格統制の弊害を書きましたが、価格統制が消費者の利益に繋がるケースは非常に稀です。ですが、「国民の必需品の価格がある水準以上には上がらないように規制しよう」というのは、一見良い政策に聞こえ、国民受けが良く、だから政治的にも人気の政策なんですよね。
こういう一見良さげな、でも実は国民の利益を損ねる政策に、国民の多くがダメだしできるように経済学を勉強しよう。
それにしてもこの国では、色んな理由で色んな物が品不足になるなあ。