昨日(June 18, 2009)のDaily Nation(ケニアの有力紙の一つ)に小さい記事で"Witch's hand seen in Coast poverty"というのがありました(p32)。記事は、ケニア投資機関(Kenya Investment Authority)が主催したCoast県の経済発展なんとか会議の要旨をまとめたものなのですが、要するに、後進的な伝統とか習わしなんかが、経済的な発展の足枷になっている、というものでした。県長官(Provincial Commissioner)の報告によると、魔術を操ったと疑われた老人が殺された事件なんかで、投資家がビビり投資案件がこの地域から逃げていってしまう、とのこと。記事では殺された老人は複数形になってましたから、その類いの殺人事件は一件だけではなく、複数あるのでしょう。ケニアにも有るんですね、この手の事件が未だに。
この記事で、Ted Miguelの2005年の「貧困と魔女狩り」というタイトルの論文を思いまだしました。タンザニアの村落の魔女狩り事件(老人が殺された殺人事件)と貧困との関係を検証した一見エキセントリックな論文ですが、経済学では上位にランクされる学術誌に掲載されてます。論文によると、タンザニアの農村で魔女狩りと称して年老いた人が殺されるケースがしばしばあるが、そうした殺人事件の頻度は貧困の程度が激しくなると増え、緩和されると減る。魔女狩りは、実は、貧困が原因で起こっている、とのこと。つまり、魔女だから、魔術を操る怪しいヤツだから殺されたのではなくて、天候不順やその他の理由で食べ物に極度に困ったときに、労働力にも大してならないし、抵抗も大してできない老人を口減らしのために殺している、ということです。
ケニアのCoast県の魔女狩りの場合も、同じ様なストーリーのもとで起こっているのではないでしょうか。ところで、CPが言ってた、怪しげな習わしのせいで投資が来ない、ってのは本当なのでしょうか。投資家が来ないのは収益率が低そうだからでしょ、おそらく。投資が来ないのを、取りあえずこの地域の悪習のせいにしておけば、誰も悪くないからね。
技術や環境の変化で、変わらないと思っていた古い伝統や習慣がコロっと変わることは良くある事だから、アフリカの風習もころっと変わるかもしれませんよ。少なくとも貧困がなくなれば、魔女狩りはなくなるでしょう。
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