先週(7/30)の事なんですが、ナイロビにあるスラムの一つムクル地区(Mukulu slum)へ行ってきました。ケニアで活動するNGO関係者のグループが企画したツアーに参加させて頂きました。普段は農村家計の調査をしているので、都市の貧困層の居住区へは行った事がなかったんです。ナイロビは近年治安がどんどん悪化しているし、特にスラム周辺はケニア人ですら危ないですから、スワヒリ語もしゃべれない日本人の私にはスラムに一人で乗り込む度胸は到底ありません。その点、農村は良いですよ。のんびりしてて平和で。今回、こうしたツアーを企画される方々がいらっしゃって貴重な体験ができました。大変有り難かったです。
ナイロビ中心地からモンバサロードをジョモケニヤッタ国際空港へ向かい車で15分くらい走り、途中で左手に折れるとちょっとした街があります。更に左手に折れると、車がやっと一台通れるくらいの凸凹道になり、道路沿いの小さな商店、路上の物売り、その裏に密集するトタン屋根の住居でごちゃごちゃしてたところへやってきます。その周辺がMukulu地区です。
ツアーの目的は、シスター・ベロニカ(Veronica?)という女性が支援するワーキング・グループを見学し、彼女やグループのメンバーから話を聞くことでした。
彼女は元々農業普及員(現在も農業省に所属しています)で、農村を周り農民に農業技術などを教えていたそうです。(私の知る限り)アフリカの多くの国で農業普及員のサボタージュが問題になっているケースが多い中、彼女は例外的な情熱で仕事に取り組み、その活動が認められ、現在は農業省から特別に車とドライバーを与えられ、毎日違う地域に出かけては、ワーキング・グループに新しい技術・ビジネスを指南し貧困層を支援しているそうです。
このムクルスラムでは、教会を拠点に幾つかのワーキング・グループが活動していて、それぞれのグループが洗濯洗剤、ポテトチップス、絞り染めの衣服、アクセサリーの生産してました。製品は各メンバーが近所の住民に売っているそうです。これらのビジネスは全てシスター・ベロニカが教えたものです。初期投資もわずかで技術的にも簡単なビジネスですが、しっかり収益があがっているそうです。今後はこれらの商品を売る直売店を開いて事業規模を拡大するのが、メンバーの夢だそうです。
スラムの住民は農村出身で田舎で生活が困窮したため、仕方なく街に出てくる人が多いのですが、彼ら彼女らは教育もあまり受けておらず、都市部でもなかなか仕事を見つけられない。ビジネスを始めるにも資金はないし、知恵も無い。
更に、出身地もバラバラでお互い関係が希薄だから、中々共同で事業を始めるなんてことも難しいようです。でも、シスター・ベロニカの様なリーダーがいるとグループも纏まるし、事業も軌道に乗る。彼女も強調してましたが、貧困解消には付加価値を生み出す工夫、ビジネス・マインドが重要です。
このスラムでもあんな簡単そうで誰でも前からやってそうなビジネスが収益を生んでいるようですから、ビジネスをスラムで紹介するような支援活動なんか貧困対策に有効そうですよね。経済学でいう完全競争に近い状況では、利益の機会があると沢山の参入が起こり、そのせいで終いには利益の機会がなくなってしまいます。技術が容易で初期投資も少ないような産業の場合は、市場は競争的なはずなんです。だからそんな収益のしっかり出るしかも簡単なビジネスが、残されているとは考えないものなんですよね。現実はそんな状況とはほど遠いようです。今度、研究費が穫れたらフィールド実験してみようかな。
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